異世界ワンコ
マキニャンコ
第1話 プロローグ
「ふぁ~、疲れたぁ~」
僕は、深夜から昼過ぎまで、野菜を運んでいる市場から出るトラックドライバーの五月 薫だ。
こんな仕事なので出会いもなく、生活するのにいっぱいいっぱい
唯一の癒しは、毎日帰る時間帯に公園に散歩にくる黒柴さんだ!
野良じゃないよ?
飼い主さんは、おじいさんでかなりの資産家みたいだ。
いや、だってさ…
公園に散歩に来るのに黒いリムジンで送迎してることが何回かあったからね。
僕の家は、公園の直ぐ横なのでバイクを玄関前に停めて、公園のベンチへ向かって歩く
バイクは原付で、名前はまだ無い
車庫に行けば、祖父の乗ってた車があるんだけど、ナンバー無いんだよね…
休みの日には車庫の前に出して、洗車してるし整備もしてるから、ピカピカだし不具合もない
公園のベンチで、晩御飯がわりに買ってきた菓子パンとお茶を飲んでると、おじいさんが持つリードを引っ張って、クロ(黒柴)が歩いてくる。
僕を見つけると、リードを外して欲しいらしく、おじいさんを見上げる。
おじいさんも公園内だからなのか、リードを外して、クロを解き放つ…
毎回のことだが、リードが外れると真っ直ぐに僕の方に駆けてくる。
手前で停まれ!と願いながら見てるとミサイルのごとく腹に突っ込んでくる…
ドンッ!
いや、あのさ……
「食べたの出ちゃうから、手加減してよね。クロくん」
って、クロに話し掛けながら抱っこする
「何故、残念そうな顔なのかな?」
どうやらリバースしなかったのが不満らしい……
いや、君を抱っこするのに腹筋鍛えましたからね?
「お仕事終わりの憩いの時間にうちのクロが、毎回すまんの」
とおじいさん
「いやいや、僕もクロくんのこのダイブとモフモフで癒されてますから」
「なら、エエんじゃが……、こやつウチに来たときは、誰にも懐かんで小屋に入れっぱなしじゃったんじゃよ。さすがに可哀想で引っ掛かれながらもワシが連れ出したんじゃ」
「そうだったんですね。
こんなに懐っこいのに」
「この公園にきて車のドアを開けた瞬間、逃げ出しよって、まっすぐ薫君のお腹目掛けて突撃してから、大人しくなったんじゃよ」
「あれは…辛かったですね。貧弱でしたから……ハハハ」
と力なく笑うとクロが顔を舐めてくる。
「済まんな…、じゃが、薫君に会ってから良く言うことも聞くようになったし、家人が触るのも嫌がるどころか嬉しそうにしてくれての」
「そうなんですか!あ~、僕でストレス発散出来てるのかな……」
「ん~どうじゃろうな、薫君の不思議な雰囲気がクロや他の動物に影響を与えるのじゃなかろうか?」
「雰囲気ですか?」
「そうじゃの……ワシもこの歳でそれなりの資産を作るために色々な人に会ったよ。その中にも薫君と同じような人はおらんかったな……」
「そうなんですか?雰囲気って言われても僕自身良くわかんなくて……」
「そうじゃの……でもクロだけでなくワシも薫君と話すのは楽しいからの……フオッフォフォ」
と何処かの印籠だしそうなご隠居様のような笑顔で言ってくれた。
「あはは、ありがとうございます。じゃぁ、ちょっとクロ君と公園周り1周してきますね」
と、立ち上がりながらクロにリードを付けてゆっくり下ろした。
ゆっくり30分ほどジョギングしながら公園を周りおじいさんの元へ戻り、クロのリードを渡し、黒の頭を軽く撫でてやると目を細めて気持ち良さそうにしている。
駐車場から歩いてくる、出来る執事の雰囲気を纏ったおじさんが…
「会長、そろそろ…」
おじいさんが片手を上げて、了承を示し僕に向き直ると
「薫くん、また明日じゃな…もう少しゆっくり話したかったのじゃが、今日は色々あってな…」
「あ…はい。また、明日、クロくんも明日ね」
と、いつものように会話してクロ達が車で帰るのを見送り、家に帰る。
日課になった筋トレをして、シャワーを浴びたらベッドに倒れ込みまどろみの中に…
目覚ましがなる……
軽くシャワーを浴びて、ご飯を炊いてる間に朝食とお弁当作り
「あ~、昨日買い物しなかったからなぁ……」
と、一人暮らしアルアルな独り言
まぁ、納豆ご飯に卵焼きと味噌汁だな……
お弁当は……おっ!冷凍庫にミックスベジタブルあるな!チキンライス(鶏肉なしだけど……)作ってオムレツ弁当だな
さて、今日も仕事後のモフモフを楽しみに頑張りますか!
と、仕事に行くためにバイクを押して門を出たとこで……
ドンッ!
人がぶつかってきた!
うわッ!と思うまもなく
ぶつかってきた人も何故かヘルメットを被ってる。
そのせいか、ぶつかった拍子に倒れたバイクに足を取られ、家の門に頭からダイブしてた。
「いてててっ、何だ?どうした?」
プチパニックになってたが……
後から数人の警察官が、走ってきた。
「なんか、あったのかな?」
呟きながら立とうとしたら体に力が入らない……
ふと、自分の下を見ると血溜まりが池のように……
そこで僕の意識は真っ白な空間に漂った。
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