The girls who can't be grey

葉霜雁景

 どこかの世界に伝わる話では、かつて天空は、双子の姉妹神によって治められていたのだといいます。姉はいろんな力を持っていて、妹はその力を世界へ行き渡らせる力を持っていました。

 仲良しな二人は協力して、世界にたくさんの恵みをもたらしていました。けれどある時、二人は失敗してしまいます。姉神は力を大きく出しすぎ、妹神はその力を制御しきれなかったのです。

 力というのは、熱でした。火でした。とても危ないので、姉妹にしか扱えなかったもの。その姉妹ですら失敗してしまったのだから、本当に危ないものなのです。

 姉が生み出した火炎は、妹に大火傷を負わせてしまいました。姉は泣きながら妹を癒そうとしましたが、妹の体はどんどん崩れていきます。やがて、妹は真っ白なむくろになってしまいました。どんなに声をかけようと、言葉を返してはくれません。

 いなくなってしまった妹神の力は、姉神へと渡っていました。元々は一つでしたから、姉に力が戻ってくるのは、何ら不思議なことではありません。でも、姉神にはそれが、悲しくてたまりませんでした。だって、妹はもう、どこにもいないのですから。

 姉神は、妹と別れたくありませんでした。ずっと一緒だったのですから、それも当然でしょう。妹のために棺桶を用意して、妹のために花を敷き詰めて。骸をそこへ収めた後には、また自分の力で傷つけてしまわないように、重ねた黒いとばりで棺桶の周囲ごと覆いました。

 制御する力を取り戻しても、姉神は完全になったわけではありません。大きな力を使い、そしてまたそれを制御するのは、あまりにも大変でした。そのため、姉神は天空の半分しか治められなくなってしまいました。

 独りぼっちの姉神は、どうすればいいのか分かりません。妹神が恋しくて、妹神に申し訳なくって、ずっとずっと泣き続けてしまいます。そのせいで、地上は雲と長雨に閉ざされてしまいました。地上に生きる者たちは、とても困ってしまいました。

 地上に生きる者たちは、姉神がどうして泣いているのか分かりません。でも、とても悲しいことがあったのだろうと思い、姉妹神のために祈りました。地上からの祈りは、二柱の小さな神となって、姉神の元へ届きました。

 祈られてやってきた二柱は、泣き続ける姉神に、一体どうしたのかと問いかけます。独りぼっちだった姉神は、ようやく話を聞いてもらえました。自分が妹を殺してしまったこと。天空の半分しか治められなくなったことを。

 二柱の神は、姉神を慰めつつ、一つ提案しました。妹神を通して、天空のもう半分を治めるのはどうかと。以前よりも力は届けられないかもしれませんが、届かないよりはマシだろうと。

 事実、その提案は功を奏します。黒い帳と棺桶に囲われていてもなお、妹神の骸は、姉神の力を通すことができました。力を通した妹神の骸は純白に輝いて、暗く閉ざされた地上を、照らし出してくれました。

 姉神は自信を取り戻しましたが、また独りぼっちになってしまうことや、自分の不安が深刻な影響をもたらしてしまうことを恐れました。そこで、二柱の神に、傍にいてくれないかと頼みました。二柱の神は、姉神のためにやって来たようなものですから、快く頷きました。

 いつしか、姉神が治める天空は昼、妹神が治める天空は夜と呼ばれるようになりました。昼と夜の間は、二柱の神がそれぞれ天空の番をしてくれています。そちらもいつしか、朝、夕と呼ばれるようになりました。

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