塾の帰り道〜短編集〜

崖っぷち受験生

塾の帰り道

あれは、俺がまだあそこの塾に通っていた時のことである。



初夏のある日。塾が終わり、仲のいい4人で帰っていた。

メンバーは、俺であるOと、同じクラスでまぁまぁ仲の良い男子のH、一個下の学年の俺らの盛り上げ役であるU、そして当時付き合っていたM。


みんなで話しながら帰っていた。

住んでいる場所は俺とUとHは近からず遠からず。

Mだけ校区が違った。


一緒に帰るのはいつも同じ曜日。

そして、いつも決まった場所に自転車を停め、立ち話をしていた。

しかしその日は、Hが早く帰った。

なんでも、先週に俺らと喋っていて帰るのが遅くなったことが親にバレ、叱られたらしい。


だから、その日は俺とMとUの3人で話をしていた。

10分ほど話し、スマホを確認すると、時刻は20:17だった。


「なーなー、怖い話でもせーへん?」

とUが笑いながら言う。


「おっ、いいやん。」

俺も賛成した。


「えぇ。怖いやん。」

Mはびびっていたが


「大丈夫やって〜。Mには彼氏さんがいるしぃ〜?一番かわいそうなん私やろ〜。」

と笑いながら言うUに根負けしたのか、渋々参加していた


「じゃあ俺からなー。

お前ら、『てけてけ』って知ってるか?

あんな、てけてけって言うのはな、ある女の子が、、、、、、、」

俺は自分が知っている怪談を話した。


「えぇ〜。怖いって〜。」

とUが言う。


「ほんまに怖い。やばいってー。」

とMも言う。


「じゃあ次は私な。最後は嫌やから」

とMが言った。

「最近お母さんに聞いた話やねんけどな、昔って戦争があったやん?

それでな、、、、、、、。」


「いやいや、俺のより怖いやん。なんやそれ。」

「怖すぎる。一番怖いかも。」


「え、そうやろー。私もお母さんから聞いた時お風呂入られへんかったー。

じゃー最後はUな。」


「オッケー。

えっとな、つい最近のことやねんけど、ここら辺でな、、」


「えっ。」

とMが声を出す。


「ちょっとー。まだ何も言ってないんやけどー。」


「あっ、ごめんごめん。いや、見間違いかな。ごめん、話続けて。」

とMが謝る。


「まーいいけど。それでな、ここら辺で、、」


「おい、ちょっと待て。」

俺は目に入ったものに思わず声が出る。


「ちょっとほんまに何よー。2人揃ってー。しつこいわー。」


「すまん。でも今そこの電線に女の子とお爺さんがぶら下がってたんやけど。」


「「えっ?」」


「何それどこ?」「Oもみえた?」

UとMが言う。


「みえたって、M、お前さっきあれが見えたんか?」


「うん。」


「えっ、てか女の子とお爺さんが電線にぶら下がってた?」


「おう、でぶら下がってるって言うより吊られてるって感じ。」

Mもうんうんと頷いている。


「えっ、おかしい。さっき言おうとしたのはな、最近ここら辺で強盗殺人が起きて、被害者のお爺さんと小さい女の子が電線に吊られてたらしいねん。」


俺達は驚愕した。そんなことがあるって知らなかったからだ。


「それでな、犯人もまだ捕まってないねん。目撃者は一応おるんやけど、眼鏡をつけたスーツの男やったらしいねん。それもおっきいカバン持ってたらしいで。

それに、電線吊らられてたから、もしかしたら人間の仕業じゃないんちゃうかって言う意見もでてて、捜査は難航してるらしい。」


そこで俺は急激に危機感を感じ、

「おい、すぐ帰るぞ。2人とも俺が送って行ったるから、はよ自転車乗れ。」


「え、急にどうしたん。」

とMが聞いてきたが、答える暇はなかった。


「ええからはよ乗れ!」


無事2人を送って行ったが、何があったかは教えなかった。



2人の後ろ何mか先には、スーツ姿で大きいカバンを持ち、眼鏡をかけた男が笑顔でこちらに歩いてきており、その手には血のついた何かが握られていたからだ。





あれから俺は塾をやめ、あの道にたまることは無くなった。


犯人はまだ捕まっていないらしい。



あの日から一週間、Uが死体で発見された。それも電線にぶら下がった様子で。


次はMか。はたまた、俺か。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る