第13話 移動乙女
「自分をダシに勝負しただぁ!? このバカゆいと!」
美装を解除して司令の部屋に戻った後、しずくねぇに一発殴られた。
「負けたら……私と別れる事になったかもしれないんだぞ。嫌なのは私だけかよ、お前は……私なんてどうだっていいんだろ」
「ひなちゃん司令の居場所を守ってやりたかったんだ。その為には戦わなくちゃいけなかった、だから戦ったんだ! 俺はしずくねぇと別れたいなんて思ってない!」
しおらしいしずくねぇは下を向いたまま。
『一人にして』
と、言って部屋から出て行った。
追いかけようとしたが、オキナワに止められた。
「ゆいと君に悪気が無かったのはスターも分かってる。でもね、自分との繫がりをダシに使われたのが嫌だったんだろうね、君が今行っても無駄、時間だけが解決してくれるさ」
そんなつもり無かったのに。
悲しませるような選択じゃないって思ってたのに。
「……ゴホン、えっと、話を続けるわよ」
トウが後ろで電話しているレンを指さしている。
「今日の話は……バカ弟の愚行によって取り消されたわ。ま、その、ヴァルガニカだっけ? ゆいゆいさんは弟に勝ったんだし、美装製作能力は再評価に値する。それにスターさんの美装もあの短時間でかなり変わったわ……貴女達がいる乙女を畳むのは損害になる、って事で収まったわ」
「えっと、えっと、つまりその」
司令があわあわあたふたしている。
きっと意味が分からなかったんだろう、可愛いなぁ。
「司令、まだここにいてもいいんですよ」
そう言いながらオキナワが司令の頭を撫でると、司令は両手を上げて喜んだ。
「……はい、お姉ちゃんに代わります」
レンがトウに電話を渡した。
嫌そうな顔をするトウだったが、レンの真面目な顔をみて顔色を変えた。
「トウです……はい、乙女にいます……了解しました」
「スピーカーにしてもいい?」
オキナワが頷くと、俺の頷きを見ないでスピーカーがオンになる。
『自己紹介をしたいところだけどそれは後、質問も受けつけない。とにかく話を聞いて』
「あ、お姉ちゃんの声なのです!」
『みさと居るんだろ、ガキ黙らせておけ』
「コールサインがあるんだからそっちで呼んで……下さいよ」
オキナワが司令にケーキを出して黙らせた。
あの見た目でみさとか……本当に女の子にしか見えないな。
『失礼、とにかく今はフェイスレスの進行が各地で起こってる。抑え込んではいるが数では不利を背負っている状態で気は抜けない、ゆいゆいとか言ったな、いるか?』
「は、はいっ!?」
いきなりの名指しだったので変な声が出た。
変な奴だと思われたかも……うゎ、やっちまった。
『そっちの乙女がかなりキツイ状態なのは知ってる。だが、一つ頼まれて欲しい。私達はそこのトウとレンが戻り次第新たな巣を破壊しに行く、その間、私の地域を守って欲しい。トウを倒す程の実力の君が居れば大丈夫だと思うから』
「えっと……へ?」
こうして、俺としずくねぇは新幹線に乗り、別の乙女の管轄までやってきた。
宿も取られていて(きっちり一人一部屋)
食事や観光の為の小遣いとして二十万が渡された。
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