第8話 金色困惑無双狼

「おらぁどけこらぁ! うちのボスがお通りだぞ」



「……」



 翌日、校門で待っていた風香くんに捕まり、彼の背に控えながら僕たちのクラスに向かって行進中なう。



 今日まで誰も僕に目もくれなかった。でも今は誰もが僕を見ている。そう、みんなみんな僕を化け物でも見るような目で見ている。



 違うんです、僕はか弱いただの女生徒です。

 本当なんです、信じてください。



 そんな感情を視線に乗せてみるけれど、僕と目が合った生徒たちは一様に目を逸らし、ひそひそと何事かを話し合っている。



 その内容はどれも似たり寄ったりで、ケダモノをワンパンしただの、獣に首輪を付けて飼いならしているだの、どうして1日でここまで噂が広がっているのでしょうか。



 僕が風香くんの背で引き攣り笑いを浮かべていると、そっと寄ってきたトラくんが耳打ちしてきた。



「おはようさん、なにがどうなってこうなった? 風香の奴、大分生き生きしてるぞ」



「……どうして、でしょうね~」



「おうトラ、お前も陽愛のなわばり広げるのを手伝えよ」



「うむ……まっ、楽しそうだし乗っとくか」



「ちょっとトラくん?」



「いいじゃねぇか」



 そう言ってトラくんの手が僕の頭に添えられた。



「これなら、否応でも俺と風香が近くにいられるしな」



「ああ、陽愛は俺たちのボスだからどこにでもついて行くよ」



 風香くんとトラくんが揃って振り返り僕に向かって手を差し出してきた。

 なんだこれ乙女ゲーか? 獣系イケメンな風香くんと爽やか猛獣系のトラくんに揃って笑顔を向けられたら僕には何も出来ません。



 僕は朱が差した顔のまま、2人の手を取った。



 少し物騒だけれど、きっと今の僕の居場所はここなんだろう。

 思っていたものと大分違っているけれど、やっと僕の学生生活が始まったような気がした。



 小さななわばりから始まったけれど、どうにも僕はこれからこのなわばりを広げるために、学校に通うことになるらしい。



 2人の猛獣に手を引かれ、僕は肩を竦めるのだった。

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