第2話 言葉
「ふぅ〜……とりあえずファーストミッションは大成功だな……」
そうつぶやきながら俺は奏汰と志桜里が待っている市長室に向かった。
俺は事の顛末二人に伝えた。
「……と、いうことになった」
「なるほど、めちゃくちゃにしてやったな」
ふたりとも笑いながら俺を褒めてくれた。
志桜里は少しやりすぎなんじゃないの?と言いつつも俺のされたことを知っているので目を潤わせながら笑っていた。
恐らく友人が復讐をすることができてホッとしたのだろう。
「さて、じゃああとはお前の親だった奴らに地獄を見せるんだよな?」
「ああ、もちろん」
俺はこの日のために色々と手を回していた。
だから俺は、証拠となるものを探した。
これに関しては完全に揃っている。
なぜなら学校側に報告するために早い段階で盗聴器を設置していたからだ。これによって学校も認めたので恐らく大丈夫だろう。
「と、いうことで二人は全く心配しなくても大丈夫。絶対に勝てる。だから安心して待っていてくれ」
そう俺は告げた……が、二人はどうにも納得がいかないのか、ふくれっ面だ。
「おいおい修斗、ここまでかじっているのに最後はおいていくのかよ」
「そうそう、そのまま私達をおいてどっかに行こうっていうのも全部知っているんだよ?まさか気づいてないと思った?」
え、知ってたの?そう思い俺は戸惑った。
(あれ?誰かに言ったっけ……いや、誰にも言っていないはずだ。てことは……)
「お、図星かな?」
「やっぱりカマをかけて正解だったね」
「やられた……」
でもバレたところでどうにもならないか。
「ああ、これが終わったら俺はばあちゃんのところに住まわせてもらうつもりだ。本当に勝手で申し訳ないと思うけど、俺は疲れてしまったんだよ……だから」
「待て待て、みなまで言うな」
その喋り方はどうした。
「俺たちはそんなこともあろうかと一緒に行きたいと親にも言ってある……が、流石にだめだったなぁ」
「だから私達は高校を出て、そっちで一人暮らしを始めるの!それならどう?みんなで楽しく暮らせるよ」
俺はびっくりした。そこまで読まれていたのか……と思った。
それと同時に、嬉しくなった。こいつらに迷惑だけはかけないでおこうと心の底から思っていたのだが、向こうも合意の上ならありがたい……
俺は涙が出てきそうになったので、それがバレないように若干上を向いて涙を引っ込ませて……
「ありがとう……じゃあ行こうか、最後の戦いに」
少しして、市長さんが帰ってきた。
「すまない、長く待たせてしまって。……なかなか話が進まなくてな……」
なるほど、どうやらあいつは最後の最後まで迷惑をかけるようなクズだったようだ……そう、俺の中での認識が悪い方向に変わった。
「いえ、市長さんにはとても感謝しています。これで俺もスッキリしましたし」
「なら良かったよ。改めて申し訳なかった、修斗くん、奏汰くん、志桜里さん……心から詫びを言わせてくれ」
そう言ってもう一度彼は頭を下げた。
「1つ俺からいいですか?」
そう俺は話を切り出した。どうしても謝っておきたいことがあった。
「正直俺は最初、武田を勘当させ、親、つまり市長さんを週刊文春にでも突き出そうかと思っていました。」
俺はそう言い、頭を下げようとしたが、
「いや、それくらいされても私は何も言えないよ……むしろそうされてもいいくらいのことだ」
「いや、でも……俺は関係のない人の人生をめちゃくちゃにしてやろうと思ってしまった訳で……」
「確かにそれは駄目だ。でも今回はあいつの責任でもあるが、止められなかった私の責任でもある。これはあくまで私の考えだが、親は子供の責任を連帯して受けるべきだと思っている。だから私は何も君に言えないし、言う資格も無いと思っている。君たちがしようとしたことはもしかしたら他の人たちは非人道的だ、と言うかもしれない。でも私はこの行動を起こしたことが正しいと思う」
そう市長さんは俺たちを見ながら言った。
俺はこの言葉をしっかりと胸に刻んだ。恐らく二人も。
「ありがとう……ございます、でも俺は最後に自分の親に復讐をします。誰になんと言われようとも……」
「私はずっと応援している。だからがんばれ」
「……はい」
「奏汰くんと志桜里さんも修斗くんを精一杯サポートをしてあげてくれ。私からは何もできなくて申し訳ないが、よろしく頼む」
「「はい!」」
「では、市長さん、ありがとうございました。失礼します」
俺たちは市長さんに背を向けて部屋を後にした。その間、彼はずっと手を振り、送り出してくれた。
ずっと、ずっと……
市役所を後にした俺たちは沈みかけている夕日を背に受けながら、帰路についていた。
「なあ修斗、今夜うちに泊まっていかないか?」
と、奏汰は言い出した。
「いいのか?その……親は……」
「もちろん、何ならうちの子にならないか?とか言ってるくらいには受け入れてるぞ。てか、お前だって家に帰りたくないだろ」
それはそうだ。あんなところに行きたくない。
「少しは甘えろよな」
「修斗はありがたく甘えることを覚えるべきだよね〜」
「頼むから俺たちを頼ってくれよ……ずっとお前は一人で色々と計画を進めてたじゃねーか。だからこれくらいはさせてくれよ」
本当に俺には勿体無いよな……こんなに良い奴らは世界中探してもそうそういないだろ。
「じゃあ、頼んでもいいか?」
「おうよ」
「私は帰るね、本当なら一緒にいたいけど流石に男女でのお泊りは許してもらえなかったから」
「まあしょうがないよな」
俺もそう思う。おれが志桜里の親なら多分だめだと言うし。
「じゃあ……また明日、一緒に戦おうね」
そう言い残して志桜里は帰って行った。
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