全てを壊された俺の復讐
香住ケ丘の異端児
第1話 復讐
今日、俺のすべてが終わった。
いや、壊された。
何があったのか、それを思い返すことですら悪寒が走る。
俺はいつも通り学校に行こうと友達と一緒に学校に向かっていた。いつもは電車で行くのだが、最近運動不足が気になりだしていたので二人で歩いて学校に行っていた。
それが運の尽きだった。
俺たちは信号を渡るために話しながら待っていると、隣りにいた小学校高学年の男の子が急に押されたかのように横断歩道に飛び出した。俺はその子の隣に立っていたので手を握って引っ張ったのでなんとか大事にはならなかった。
男の子は俺に「ありがとう!」と言った。
だがその男の子の近くにいた中年の太ったおっさんが俺を指さしてこう言いやがった。
「い、今!こ、こいつが男の子を突き飛ばそうとしたぞ!!」
そう言われた瞬間俺たちは(何言ってんだ?)と思って歩き出そうとしたら、大勢の大人に取り押さえられた。
友達と男の子は違うと言ったのだが、馬鹿な大人たちは全く聞く耳を持たずに俺を警察に突き出した。
俺は警察に事情を聞かれたのだが、まず俺はやっていないので事情もクソもない。
だが俺がやっていないと証明できる防犯カメラも近くになかった。それに大勢の馬鹿共(周りの大人)がこぞって「こいつがやった」と言うので俺は警察のところでお世話になってしまった。
すぐに親が駆けつけた。
だが、親も馬鹿だったらしい。
すぐに大人の言うことを信じて俺に無理矢理謝らせた。
更にそれだけにとどまらず、地方のニュースに名前こそ出ていないものの、高校名、日にち、事件場所が発表され、その日に学校を休んだのが俺だけだったらしく、すぐに特定された。
それからは言うまでもないだろうが、俺はいじめの対象になった。
ものがなくなる、殴られる、靴箱に画鋲、考えられるものはたった2日で網羅された。
俺を笑いながら殴ったやつには一緒に弁当を食べたやつ、文化祭で一緒にステージに立ったやつ、部活動で切磋琢磨しあったやつ、そんな関わりを持っていた奴らも失った。
今でも俺と一緒にいてくれるのは、事件の日俺を擁護してくれた奏汰かなたと、家が近く、小さい頃から関わりのあった志桜里しおりだけだった。
だから俺はこの二人とはいつまでも仲良くし、感謝をしたい。
事件から8ヶ月が経った今日、俺が冤罪であったことが証明され、俺を指さしたおっさんが真犯人として捕まったというニュースが全国、そして俺のいる学校中に広まった。
それからというもの、俺へのいじめはばったりとなくなり、急にヘコヘコと「悪かったな……」だの、「ごめんね……」だのほざく奴らが出没しだした。
「ほんとに酷いよね!男子も女子も!はぁ……こんな奴らがいる学校にあと1年もいなきゃいけないのか……」
そうぼやくのはずっとそばにいてくれる志桜里だ。
「全くだ!てか、あのときに修斗を指さしたおっさんが犯人だったのか……馬鹿だなぁ」
そう言いながらもあのおっさんを思い出して少ししかめっ面なのが奏汰だ。
「あぁ、何でもあいつここの学校に落ちてこの制服着て話してた俺が気に食わなかったらしい」
「ホントの馬鹿じゃん」
あの場に証拠となりそうな防犯カメラはなかったのだが、偶然近くで動画撮影をしていたユーチューバーが回していたカメラにその瞬間が映っていた。
俺はその人の自宅を教えてもらい、直接感謝を伝えた。何度も、何度も。その人は事件の日にその近くにいたことを知って、何十回も録画映像を見返してくれたらしい。すると、後ろから突き飛ばすおっさんが映っていたらしい。
俺はこんな人のために行動することができる大人になりたいと心の底から思った。
「ていうか修斗、あいつらにはこれからどんな制裁を下そうか」
「あまり物騒なことを言うな。そんなことしたら俺らもあいつらと同レベルだぞ」
「でも修斗、流石にやりすぎだったと私は思うな……」
そう志桜里に言われて思い返した。
この8ヶ月でなくなったシャーペンは16本、そのうち筆箱ごとやられたのが5回、机と椅子がなくなったのは……何回だ?
まあいいや、水をかけられたのが38回、殴るために呼び出されたのは192回。
「よく覚えてるよな」
「忘れたいけど体に刻み込まれた記憶は消えないんだよ」
「ごめんな……もっと早く止められたら」
そんなことを気にしているようだ。
これも今更のことではなく、ずっと、事件の日から気にしている。この二人は俺にとっては勿体無いよな。だってあれからずっとおれが占拠してんだもん。
「やっぱり懲らしめたほうがいいのかな……」
「ああ、そうでもしないとあいつらの上辺だけの謝罪で許せるのか?少なくとも俺は許せない」
「……しよう……俺はあいつらと、毒親の両方にする」
全く信じずに冤罪だと聞かされた瞬間「そうか!父さんたちはずっと信じてたぞ!」と肩を叩きながら喜んだゴミ……おっと口が滑った。親だった奴らが言ってきた。俺はその日吐いた。
「まずはこの学校のゴミからやっていこう」
「「オーケー」」
誰に矛先を向けるか……そうなったときに俺は、いや、俺たちは1人が思い浮かんだ。
「「「武田」」」
あいつ……俺のこと何回殴った?多分マイ○ーと同じくらいやったんじゃないか?それにあいつの親は政治家というおまけ付き。
これはやりがいがあるな〜
「ねぇねぇ、奏汰、修斗がめっちゃ悪い顔してるよ」
「ホントだ、写メ写メ……」
「おい」
どうやって潰すか、そんなもんは決まっている。
あいつがやったことをすべて学校と親に報告し、更にそのことをネットにばら撒き、こいつの親は○○という政治家です。と拡散する。
武田の親には申し訳ないが俺はとことんやってやる。自分がやったことを、身をもって教えてやる。
「じゃあ俺は早速先生に伝えてくる」
「じゃあその間に私達は武田くんの親に会ってくるね」
「市役所にいるのはわかってるからな。こっちは任せろよ、奏汰」
「ありがとう……!」
本当に俺は幸せ者だなぁ……
「と、言うことがあったんです」
「………」
俺は学年主任の先生と、校長先生にこれまでにされたことを包み隠さず話した。
「ふむ……そんなことがあったのか……」
「はい、嘘はついていません」
そう言うと二人は立ち上がり、土下座をした。
「本当に、申し訳ない……私達は大事なところで見落としてしまっていたようだ……」
「せ、先生っ!顔を上げてください!俺はむしろ先生に感謝してるんですよ。シャーペンがなくなったときは貸してくれたり、机に落書きがされているのを見て拭いてくださっていたのも知っているんです。だから顔を上げてください」
そう、ここの先生はずっと見えないところで俺をサポートしてくれていた。
「俺はこれから武田に制裁を下します。もし学校側がやりすぎだと思っても止めないでください。俺は……まだ奏汰と志桜里には言ってないですけど、この復讐が終わったら学校をやめます」
「……私達からは何も言えない。止めるほどの事もできていない……悪評を広められても誰も君を咎めないよ」
「ありがとうございます。でも悪評は広めませんよ」
「ただ、これからどうするんだい?君は……親が信じれないだろう?」
「そこに関しては心配しないでください。弁護士をつけてもらって裁判を起こし、縁を切るつもりです。それからはばあちゃんの家に行くつもりです。もう話しましたので」
「そうか……なら私達からは何も言うまい。これからも頑張ってくれとしか言えなくて申し訳ない。君に謝っても修復できない溝ができてしまったからね……」
「いや……そんなことは……」
「それじゃあこれからも元気で」
「……はい……!ありがとうございました……!」
そう言って俺は深く、お辞儀をして、校長室を後にした。
俺は二人が行った市役所に向かった。
あとはここさえ終われば学校に未練はない。
俺は市役所に入った。
「すみません、市長に会わせてほしいのですが……」
「話は聞いています。どうぞこちらへ」
どうやら奏汰たちがもう色々と説明してくれたらしく、俺は特に何も聞かれないまま奥に通された。
両開きの大きな扉がある会議室に通された俺は、深刻そうな顔の市長とその向かいに座る奏汰と志桜里を見つけて、すごく心が落ち着く気がした。
「君が修斗くんかい?」
「はい」
「もう彼らから話は聞いている。とりあえず座ってくれ……」
そう言われおれは明らかに高そうな椅子に座った。
するとすぐに市長は立ち上がり俺に頭を下げた。
「うちの馬鹿息子がすまなかった。私は君にどうやっても返すことのできないほどの苦痛を与えてしまった。本当にすまない……」
そう言って更に一段と腰を折った。
「私はこれから頼勝を勘当しようと思う」
そう聞いて俺は驚くのと同時に嬉しかった。頼勝は武田の名前だ。それを勘当してくれるのか……そうしたらこの市長たちに迷惑をかけずに復讐できる。
「あの……市長さん。俺は冤罪が晴れる前にされたことに対して彼から謝罪を受けていません。だから一度だけ顔を合わさせてください」
「修斗?大丈夫なのか?」
「ああ、大丈夫」
「……わかった。少し待っていてくれ」
そう言って市長はどこかに行った。
5分ほどだろうか、俺たちは喋って待っていると「修斗様、面談室の方へ」と、言われたので、俺は向かった。
俺が面談室に入ると市長が待っていた。
「あいつならすぐに来る」
俺が疑問に思ったことに気がついたのかそう返してくれた。
するとドアが開いた。
「なんだよ父さん……ってなんで成宮が?」
成宮は俺の名字だ。
「座れ」
「いや、だからなんで……」
「さっさと座らんか!!!」
俺は空気が震えるという言葉を初めて体感した。
武田のやつ、ビビって座ってる……やばい笑いそう……
「……お前、何か俺に黙っていたことがあるよな?」
「ぅえ?え、えっとぉ……」
「自分の口から言ってみろ。それともなんだ?言えないようなことが思い当たるのか?」
「!?!?」
「すべて俺は修斗くんと奏汰くん、志桜里さんから聞いている……」
わかりやすく武田の顔が引きつった。
「ぁうぁぇ……ぇ、えっと……」
「すまない、もういい」
「え………………?」
「お前とは親子の縁を切る」
「は…………………………え………………は………?」
「聞こえなかったのか?」
「いや、聞こえたけど……え……」
「もう書類も作り、あとは提出のみだ」
そう言うとその書類を机の上においた。
それを見て本格的に焦りだした武田は泣きながら懇願した。
「いやだ!!なんで!?俺が!!」
「修斗くんに言うことは?」
「んなもんないよ!!」
「そうか……残念だ……ならば提出してこよう。こんなやつを息子だと思われたくもないし、こんなやつに割く時間がもったいない」
「!?嫌だ、おかしいだろ……!」
「いいか、今謝り、修斗くんが許すのなら考え直してやる」
「……うぅ……」
そんなうめき声を出し、武田は土下座をした。
「も、申し訳ありませんでした……成宮さんの心に癒えない傷をつけてしまったこと……深く反省します……」
「………」
武田がそう言った。
もちろんそれに返す言葉は決めている。
「ハハッ」
そう笑いがでて武田は上を向いた。そして凍てつくような俺の瞳を見て、歯を鳴らし、震え、そんな極限状態の武田に俺はこう言った。
「許すわけないじゃん、ヴァーーーカ」
「………………」
「じゃあ市長さん、あとはよろしくお願いします」
「お願いされた、すまなかったね、修斗くん」
そう言って、泣き崩れる武田に背を向けた。
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