第22-2話
SIDE:莉緒
あれから私はがっくんと別れて、とある女子寮へと向かっている。
目的は言うまでもなく職人クラスの一団がそこを拠点としているからだ。
先ほどにも話に上がってきたけど、本来、職人クラスの特性を考えれば固定の場所で武器や防具の作成を行える拠点が欲しいところ。
しかし職人クラスはまともな戦闘力を持たないことから、一般的にギルドやパーティーからはお荷物扱いされ、女子生徒の場合奴隷扱いの場合もある。
そんな彼女らが拠点を持たずに職人として頑張るのは難しくなってしまう。
故に彼女らは職人同士でパーティーを組んでダンジョンアタックをするだけでなく、寮を拠点替わりとして行動することを選んだ。
そのためには全員が同じ寮に住まうことが条件になる。
故に全員が同じ寮へと引っ越しを行ったのよね・・・。
そうなるとその職人クラスのパーティーへ接触を図るためにはどうしてもその寮に行かなくてはいけない。
バラけているようであれば誰かにコンタクトを取るだけでいいはずなのだけど・・・
しかしよりにもよってこの寮か・・・
この女子寮は少し特殊な寮なのよね。
一般的に寮長は早くても3年生。普通なら4年生か5年生あたりが引き受ける。
そして4年生辺りから引き受けた寮長はそのまま6年生を終えるまでの3年間寮長を務める。
7年生になる際に、それまで3年生のメンバーからめぼしい人材を見つけて寮長の引継ぎを行うのが通例なんだけど・・・・・・
この寮だけは違ったのよ。
この寮も正式には5年生の女子生徒が寮長として登録されている。
しかし実際にはその寮長はランクの高い寮の入居費を払い、そちらに住んでいるのだ。
従って寮長の登録は名前だけということ。
そしてその寮長が4年生のときにサポートを行っていたのが、当時私と同学年であった1年生の女子生徒なのよね。
そしてそのサポートをしていた生徒が2年生になり、ある程度の寮の執務が遂行できるようになった途端、本来の寮長は高ランクの寮へと移り住んでしまい、
実質的にその2年生の女子生徒が寮を取り仕切っている。
ちなみにその生徒は正義感が強く、本来はお荷物扱いされる職人クラスの一団を守りながらダンジョンアタックすることもあるとのこと。
それだけにその女子生徒の負担は大きい。
そして何が面倒かというと・・・・
その寮長がとりわけ職人クラスだけで構成されたパーティーに対して、ものすごく過保護なのよね。
どれくらい過保護かというと、当時バラバラの寮に住んでいた彼女らを自分の寮に呼び寄せるだけでなく、
男子生徒はもちろんのこと、寮生以外の女子生徒がその職人クラスのメンバーに近づいただけで異様に警戒する。
それくらいまでに面倒な存在・・・
寮の入り口のノックすると女子生徒が出てくる。
「えっと・・・?」
「いきなり押しかけてごめんなさい。2年の上日 莉緒よ。寮長の坂代さんはいるかしら?」
「呼んできますので少しお待ちください」
敬語・・・ということはあの子は一年生という事なのかな・・・?
5分ほどして目当ての人物が出てくる
「久しぶりね、莉緒。元気にしてた?」
「本当に久しぶりね、あの一件以来かしら?もちろん問題なく元気よ」
「あなたって意外と執念深いのね・・・あの一件は誤解だっていったでしょう?」
「それはこっちが先に言ったのに、一向に信じてくれなかったのは誰かしら?」
「「・・・・・・」」
知らずと火花が散る。けどまあ良しとするべきよね。
どうせ話すことを考えたら、この後この火花に爆薬を入れないといけないのだから。
「それでなんの用事かしら?もしかして彼女たちに何か用があるの?」
「そうよ。でも結構多ごとになる可能性があるから、あなたも立ち会ってくれるかしら」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・分かったわ」
そう言って寮の奥へと案内する。
―――多分これは寮長室なんだろうな―――と思った。
それにしても、また始まったわ。
あの過保護。
『わかった』の言葉を出すまでの、あの異常に長い沈黙・・・
当然その間にも目は完全に吊り上がっていたわ。
和解したはずなのにもかかわらず、再び天敵を見るかのような目つきで見られていたもの。
そうして私は寮長室へ案内されて、彼女は、私の目的の人物たちを呼びに行った。
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