第四話 地下2F→地下1F
「あのババァ…め 念動力使いだったとはな ぐぬっ!」
俺はジュエリー女を背負って通路奥、エレベーターを目指していた。
さっきの2人を倒して以来、たいした邪魔も無く悠々進む。
それも逆に気味悪いが、しかし一時の平穏が身に染みて朗らいだ。
「あれじゃ鳥じゃなくて
背中で意気消沈するジュエリー女。その四肢は既に宝石置換され、キラキラ! と輝き、代わりに口から少女の沈んだ声がした。
『てか重い…』
今となっては、鉄パイプよりコイツぶん回した方がダメージ出そうだ。
もちろん置いて行く選択肢もあったが、なんだかんだ時間稼ぎにも使ったし、その負い目からも俺は頑張って背負い歩いた。
負い目の取っ掛かりが、改めて口を開く。
「のお 鉄パイプ女 少し寄り道してもOKかの?」
俺は舌を犬歯で刺し、嫌な顔を作った。
「これ以上何も無いと限らんし 早めの用事なら」
「やや すむすむ早く済む」
『ホントかよ…』
しかしさっきも言ったが、なんだかんだ負い目もある。こうなりゃ地獄行き相乗りタクシーだ。
俺は「へいへい」とだけ言って頷き、ジュエリー女の言葉に耳を傾けた。
ジュエリー女が言うには、『2F、医療エリア』に用があるらしい。今いる尋問エリアが地下2Fだから、エレベーターでも使って一気に上りたいところなんだが…「まぁ そうか」
たどり着き、目の前に現れた薄汚いエレベーター。ボタンの縁が黒ずんで、ぼろぼろと扉の塗装も剥げている。まるで廃デパートの面持ち。
俺は側のボタンを何度も押した。
『………』
が、反応は無い。
「この様子じゃ サイレンが鳴った段階で止まってたんだろうな」
俺はどうしようか落ち着いて考える為、ジュエリー女を床に降ろそうとする。と、ジュエリー女は首にまでガッツリ手を回した。
カチカチの手が、喉を絞める。対比するように、柔らかい体が背中を沿った。
視界の端を、細い腕先がピンと向く。
「すそに階段がある ゆけ」
高飛車~
確かに指先には薄暗い階段があり、上って行けば2Fには着くだろう。
だが当然、その間には地上1Fを通る。
「おいおい 俺はこの施設から出たいんだ エレベーターが動いてんならまだしも 何でわざわざ1階スルーして2階に行かなきゃなんねぇ」
すると、ジュエリー女は俺を見下すように首を上げ、『フン!』と鼻息を持って怒った。
「わしのこと 時間稼ぎにしか思ってなかったくせに」
「む…バレてたのか」
ジュエリー女はゴツゴツの腕で俺の胸を叩き、耳元で俺の鼓膜打ち破らんほどに叫んだ。
「当たり前ぞ! あんなcrazyババァに わしのようなカワユイお子が勝てるか!」
『うるせぇ…』「オメェ 意気揚々とFightするとか言ってたろうが…!」
しかしココで言い争っても仕方ない。
俺は結局、2Fに行くかは保留として、すごすごと階段に足を掛けて地下1Fに上った。
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