第1話 男童と月の女性

 それは、ある星が輝く夜の物語。

 その日は、空に月が浮かんでいなかった。


────ザァザァ


「ぅ、うぅ゛、、、、母様、、、、」


 塩のいい匂いがするそこでは、波の音に混じり、男童の嗚咽が聞こえてくる。


 嗚咽を漏らしながら、砂浜に座って俯いている男童の元にある女性が波打ち際から近付いた。


『坊やは、1人?』


 そんな、雅やかな彼女の声によって男童は彼女の存在を認識した。


「、、、、うん、」


 やることもなく、男童は頷く。


『そう、、、母親は?』


「遠くに行った。凄く遠いところ。僕なんかが、一生歩き続けても母様が居るところには行けないって、村の人達は言うんだ。」


『そうか、坊やの母は〖死んだ〗のだな。』


「母様は、死んでなんかいない!ただ、ずっと眠っているところを村の人達がつれていっちゃったんだ!」


 その時、初めて男童は近くで声を発する女性を初めて目にした。


 村の人達とは、全く違う髪の色、瞳の色。そして、見たことの無い美しく色鮮やかな衣。


 いつか、男童の母親が話していた都の貴族の女性のような身なりだ。


 しかし、髪は艶やかな黒の髪ではなく、月の色を溶かした様な薄い金。瞳は、星のきらめきを閉じ込めたような、青い星の色。流れるように膝辺りまである髪は何も結わないで下ろしている。


 男童が見たその女性は、この世の人間とは思えないくらいに、美しく月から来た天女とも思える人だった。




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