異世界から帰ってきたら、ただの貧乏男子高校生になってた件

アンゴル200帯

プロローグ



ポタリ、ポタリ。





目を覚ますと、僕らが暮らすボロアパートの天井のシミ。凪模様から、聞こえてくる雨漏りの音。




水道管から鍋に落ちるその音が、今日も「現実だ」と教えてくれる。




畳は湿気でめくれ上がり、部屋の隅にはカビ。


風呂は冷水、給湯器の赤ランプは今日も点かない。


同居人は隙あらばいつでも嫌味を垂れ流して攻撃してくる。





隣に毛布にくるまって寝ているのは、かつて僕を殺そうと追いかけて来た少女だ。


朝は「殺す」、夜も「殺す」、夢の中でも「殺す」。恨めしや~もいいところだ。

愛が分かんないっていつもぼやいてる。これが愛じゃなければ、何だってんだ。




朝焼けにもならない光を見るとどうにもセンチメンタルになる。





僕はかつて戦士だった。勇者だとも。恐れを知らぬ英雄だとも。

まぁ、確かに、そう呼ばれたこともあった。世界は、もう僕を必要としない。

だから、僕ももう何も求めちゃいない。



ラジオじゃ今日もお天気予報について話してる。誰も気づきゃしないけど。

彼らと殺しあいをしてたなんて一ミリも触れられない。



みんなが憧れる物語の英雄が何を守ったかなんて、誰も知らない。興味もない。





今日も仕事はある。

皿洗い、棚卸し、廃材回収。後は、友達の副業に、用心棒。

稼いでも湯は出ないし、この子は一ミリも笑わない。



こんな日々でも、誰にも壊されなければ、それでいい。

…そう願ってしまうくらいには、僕はもう弱い。





このちっぽけで、情けなくて、底の浅い毎日が。


もしも、続くなら。


どうか――もう誰にも、壊されませんように。




そうして僕は今日も生きる。


帰った世界で、何も終わらせないまま。

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