道端でオバケが…いや、こ…この人ってめっちゃ美人じゃん⁉︎てか、それ捨てるんすかー⁉︎

猫の集会

それは…

 ヒューっと冷たい風が吹いてきた。

 

 あー、もう夏も終わりかぁ。

 

 八月の終わり、オレは自転車をこぎながら半袖じゃ少し肌寒いなと感じていた。

 

 帰って早く風呂入ろっと。

 

 …ん?

 少し先の方に見えるのは…布団⁇

 

 え、なんで道の真ん中に布団が落ちてんだよ…。

 だれか落としたか?

 

 

 自転車で近づくにつれてどんどんオレの頭の中は、⁇になっていった。

 

 

 は⁇

 

 何コレ…⁇

 

 アルマジロ?

 

 あ、違う。

 これ人間じゃね?

 

 自転車をとめて恐る恐る近寄った。

 

 

 ⁉︎

 

 な、何⁉︎

 

 コンクリートにポタポタと何かが垂れている…。

 

 もしかして…この人…泣いてる?

 

 うずくまって泣いてない⁇

 

「あのー…」

 恐る恐る声をかけてみるも、返事がない。

 

「うっ…ヴーっ…」

 やっぱり泣いてない?

 それとも、うめき声?

 

「もしかして、おばけさんですかー?」

 じかで触るのは、なんか怖かったからその辺の棒でツンツンしてみた。

 

「いだいょーっ」

 え?

 今、痛いって言った?

 偉大?

 何?

 

 とりあえずもう一度ツンツンしてみた。

 

 すると、棒をガシッと掴んだと思ったらいきなり棒をバキッと折るおばけ…

 

 じゃない…。

 

 こ、この人…

 

 よく見たら、めっちゃ美人な人だった。

 

「あ…、普通の人間なんっすね。」

「は?当たり前なんだけど。てか、コレ何?痛かったけど⁉︎」

「あっ、すみません…。おばけかと思って…つい」

「あんたさー、おばけだったらすり抜けるはずとか思わないわけ?それを何回もツンツンツンツンさー」

 

 …説教?されてる⁇

 

「あ、すみません…」

「ま、いいわ。ちょっと飲み付き合ってよ」

「へっ⁇オレ未成年っす…」

「あー、大丈夫。そんなんじゃないから。ほら、あそこ!自販機」

 

 ビシッと女性が指差す方に自販機が。

 

 あー…自販機でいいんだ。

 

「どれにする?」

 ガチャガチャとお金を入れる女性。

「えっ、いいんっすか?」

「うん。で、どれ?」

「あー、じゃあ梅サイダーで」

「プッ、あんた渋いね」

「はぁ…」

 

 てか…この人…この人って…

 

 びっくりした…。

 この人…笑うとめっちゃかわいい…。

 

 普通にしてると美人だけど、笑うとかわいいとか…。

 

 反則だろ‼︎

 

「ん?何?」

「あっ、いえ…」

 

 …

 

 とくにあの椅子に座ろうとか言われてはいないのだけど、なぜかオレは女の人と公園のベンチに並んで座っていた。

 

 となりでは、勢いよく缶コーヒーをあけてグビグビ飲み出す女性…。

 

 そして、

「ぷはぁ〜」

 と息を吐いたかと思えば笑いだした。

 

「アハハハ、コーヒー美味しい…ほんっと美味しい…」

 と言いながら笑ってた…はずなのに…また泣き出した⁉︎

 

 オレはとなりで黙って梅サイダーをグビグビとのんだ。

  

 となりで泣きながら笑ったりまた泣いたりしてると思いきや、あっという間にとなりで缶コーヒーを飲み終えた女性は、いきなり指輪を外しだした。

 

 あ…左の薬指。

 

 オレでもわかる。

 

 この人…結婚してるのかと。

 もしくは、婚約…。

 

 するといきなりからっぽの缶に指輪をカランと入れてゴミ箱に捨てた。

 

 はっ⁉︎

 

「ちょっ…何してんっすか‼︎」

「あー、飲み終わったから捨てたんだよ?」

「そうじゃなくて指輪」

「えっ?もういらないし。付き合ってくれてありがと。なんかだれかとなりにいてくれただけでも少し救われたわ。じゃ」

 と、その女の人はあっさりタクシーに乗って行ってしまった。

 

 は?

 

 も〜…

 なんだったんっすかぁ…?

 

 オレはその日以来あの女性が忘れられなかった。

 

 もしかして、一目惚れだったのかもしれない。

 

 

 

 そんな数年後…

 

 その人は、まさかのオレの担任になった。

 

 …

 

 自己紹介しますよ〜…って…

 

 …

 

 と言いながら先生は、固まった。

 

 うん。

 オレとバッチリ目が合いました‼︎

 

 オレはニヤリと微笑みました。

 

 そして自己紹介の時、オレは最後にひとことってところで、

「絶対に好きな人を泣かせたりしない大人になります‼︎そして、とある人の大事なものずっと預かっています。」

 と。

 

 先生は、めっちゃあたふたしていた。

 

 あと、追加で

「オレ、秘密主義ですっ」

 と、ウインクも添えた。

 

 チャイムと同時に先生は、オレを呼んだ。

 

 まぁそうなりますよねぇ…。

 

 

「ちょっ…あなた…もしかしてあの時の…」

「はい!先生。これお返ししましたよ」

 

 先生の手に指輪をお返しした。

 

「でも…」

「泣くほど好きだったんでしょ?あんな捨て方じゃ後悔すると思ってずっと持ってたんです。」

「え…」

「捨てるのは、いいのかも知れません。でも捨てるタイミングを間違えると後悔してしまう時もあるそうですよ?」

「あ…」

「先生、気持ちがちゃんと切り替わったら、そのときは指輪をどうするか決めたらいいんじゃありませんか?」

「う…うん。そうだね。ありがとう。」

 

 先生は、涙ぐんでお礼を言った。

 

 そして、

「お礼に梅サイダー奢るね」

 とあのかわいい笑顔で笑った。

 

 

 その日からオレは先生に猛アタックしたのは、言うまでもない。

 

 

 そして三年後、指輪を一緒に処分して新しいものを購入したのでありました。

 

 

 おしまい。

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