第3話

 焼きそばパンは美味しい。

 が、この男はそうでもない。というか、まだ噛んでも味がしないというところか。


「恋人は?」


「いない」


 じゃあ殺してもいいな。


「正義は?」


「人並みに」


 多少で警察やってんのか。そこは人より多くあれよ。


「なんで俺が尋問されてんですか?」


「私の屋上テリトリーに入ったからだよ」


 情報を取りに来たのに情報を吸われてるから、不服なわけだ。かなしいほどに警察の犬。


「わたしはいずれ、盗賊を継ぐよ」


 焼きそばパン。食べ終わってしまった。


「これでいいでしょ。情報」


「特に隠したりとかは、ないんだ?」


「隠して何になるのよ」


「あぁあ」


 気が抜けたような声。そして、横になる彼。


「もっとこう、同年代の才覚ある人間同士の、ひりひりした情報の奪い合いとか、そういうの期待してたのになぁ」


 あぁ。そういう。


「アニメの見過ぎよ」


 そういうのはアニメにしかないわ。


「アニメ見ないが」


「見ないの?」


「うん」


「人生の快楽をどこから摂取してんのよ。ありえないよ。え。まったく見ないの?」


「まったく見ないな。ドラマとか映画はごくまれに見るけど」


 ありえないやつだな。アニメぐらい見ろ。


「次来るまでに、これ見といて」


 寝そべってる警察の犬に、通信端末を投げつける。


「盗賊作はごめんなんだが」


「買っとるわ。失礼ね。業界に金落とすんだよ金を」


 こいつ何も分かってねぇな。

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