ミャンファの長い長い旅

深見萩緒

プロローグ


 ミャンファは猫である。ある時はナアラであり、またある時はアッシュであった。ジリィである時もあったし、ロンである時もあった。特に名前を持たない時もあった。


 猫にとって名前というものは、あってもなくてもよいものである。猫同士が挨拶をするときには、鼻と鼻とをチョンとくっつけ、ちょっとした一声を交わし合うだけで事足りた。それでもミャンファはミャンファという名前が気に入っているので、自分のことをミャンファだと思っている。


 ミャンファは今、ひとりの人間の老婆のそばで、その弱弱しい、規則的な呼吸の音を聞いていた。そしてまどろみながら、長い長い旅のことを思い返していた。

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