第一章 出会い
やはり何度経験しても新学期というものは慣れないものだ。人見知りでなかなか馴染めない人にとって、これほど憂鬱なイベントはないだろう。西条陽菜もその一人だった。学年が変わるだけなら顔見知りの人となんとかやっていけそうだが、高校一年生になり、知っている人が誰もいない新しい環境となると話は別だ。
誰かと話せないだろうかと周囲を見渡すが、男女問わず複数で楽しそうに話す人ばかりで、陽菜が入れそうな隙はない。このまま独りで過ごさなければならないのかと寂しくなり、自分のコミュニケーション能力の低さにため息が出る。
「ねえ、あなたも一人?」
新学期早々悲しみに浸っていたとき、誰かから声をかけられた。初対面なのに失礼な質問だな、と思いながら振り向く。
そこには、丁寧に手入れされているであろう艶やかな栗色の長髪と、クリクリとした大きな瞳が印象的な少女がいた。脚が長くてスタイルも良い。世間の言う「美少女」とはまさにこの子のことを指すのだろう、というのが陽菜の第一印象だった。
「…一人です」
「よかった!わたしもなかなか話せる人がいなくて困ってたの」
少女は分かりやすく目を輝かせた。陽菜は友達になれそうな人がいて嬉しい半面、こういう子が一人になるって珍しいな、と少し驚いた。
「これからよろしくね!わたしの友達さん!」
友達、という響きが妙にくすぐったくて、陽菜は頬を緩ませながら「こちらこそ」と答える。
少女は微笑んだ。
窓から四月の心地よい風が吹いてきて、少女の栗色の髪を揺らした。
これが、嶋崎麗香との出会いだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます