これが誕生日?!

一週間後、杏は誕生日を迎える。昨年はただプレゼントを渡しただけだったが、今年はサプライズしたいと考えていた。自宅を飾りつけしちゃおうと、聖美は考えた。家で宿題をしたいと杏を誘いこめば...いやでも、宿題がないことも想定出来る。似顔絵ケーキも考えたが、学校に持って来れないし、万が一それ食べて体調崩したら顔向け出来ない。自問自答しながら考えた。最終的にアルバムを作ることにした。それなら、コストもあまりかからないし。しかし、そこで問題が起きた。現像する前の段階で写真が無い事に気づいたのだ。現像することで安堵しつつも、足りないことに焦っていた。鎌倉の時と自撮り写真しか無いのだ。授業の写真がどうしても欲しかった聖美は授業を隠し撮りすることしか考えてなかった。幸運なのは教室の1番後ろに席があるからスマホをいじっても後ろに注意を払わなくていいのだ。問題は音だった。スマホのシャッター音はどうしても消せなかった。この静かな教室でシャッター音は不味い。チャンスは一回しかない。何度もフォーカスを合わせた。気づいたら授業開始から30分経っていた。覚悟を決め、スマホのシャッターをきった。音が流れると同時に咳き込んでごまかした。先生に心配されたが、大丈夫ですとだけ言ったが、嘘をついてるようで気が引けた。我ながら雑な作戦だったように思う。お弁当の時は何とか誤魔化して写真を撮ったが、生徒会活動の時はまた、音を誤魔化すため咳をした。写真は撮れた。


---聖美大丈夫?今日はもう帰ったほうがいいんじゃ・・・

---ううん、全然平気!

---でもやっぱり心配よ。今風邪流行ってるし


写真を撮りたかっただけとは言えず帰ることになった。杏は察しが良い為、素直になるしかなかった。帰り道ついでに現像した。写真はうまく撮れてた。本屋でかわいいアルバムの台帳を買った。後は写真を切って、糊で張れば完成だ。しかし、普通に渡すだけだと面白くない。せっかくのサプライズだから。机の中に入れようか。自宅のポストに入れてしまおうか。と、色々考えたが直接渡すことにした。

誕生日当日、緊張しながらも普段通り過ごし、生徒会の活動が終わった直後に世界で一つだけの作ったアルバムを渡した。


---嬉しいありがとう!くれるの?誕生日プレゼント?


サプライズのつもりはなかったが、興奮気味に喜んでもらえて良かった。苦労して写真を撮ったかいがあった。早速、中身を見てもらった。


---あ、鎌倉の写真だ!楽しかったな~。あ、これは2人で撮った写真エモいな~。え?この写真、授業中?この写真は生徒会室?いつの間に…

---ピンポーン正解です。


杏の嬉しそうな表情が段々曇っているのを感じた。


---授業中と生徒会室は携帯の使用禁止じゃない。何やってんの?聖美らしくもない!


聖美は、言い返せなかった。杏のいう通りだった。完成させることに集中してしまい、最低限のルールを忘れていた。聖美はうなだれた。杏が怒るのも無理なかった。怒った杏を見た聖美は、プレゼントを置いて走って逃げてしまった。杏は追いかける気にもなれず、プレゼントを手に取りその場から離れた。携帯電話もSNSも通じなかった。

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