レベル1がMAXだけど、それで十分

不定形

第1話

「おーい出来損ない!来てやったぞ!出迎えろぉ!!!」


「うるさい……」


 馬鹿がまた来た。めんどくさい……

 布団から出て、目を擦りながら騒音の元へむかう。


「なに?あさからうるさい…」


「おい穀潰しの役立たず!この俺にそんな口聞いていいのか?お前のような奴が生きていられるのは俺たちのおかげなんだぞ?」


 外聞のためだけのくせに。そのクソのようなプライドのその高さだけは私も勝てないよ。全くもって憧れない。


「そう」


「何だその態度は!!ふん!父上が呼んでいるんだから行くぞ!」


 えぇ……何のよう?ほんとめんどくさい。


「早く行くぞ!俺は忙しんだ!」


「いつも来てんのに。暇だと思ってた」


「黙れ!!早く行くぞと言ってるんだ!」


 うるさっ。てか行ってるじゃん。




 歩いて進むこと少し。久しぶりに実家に帰ってきた。

 あいも変わらず無駄にでかい。中も無駄に豪華。あちらこちらがキラキラしてうざったしい。


「父上、連れて参りました」

『うむ。入れ』


「失礼がないようにな!」


 馬鹿兄がそんなことを言う。

 失礼なのはお前らだろう?今日誕生日なのに、朝っぱらから呼び出しておいて。


「失礼します!」


「あぁ、ハルト。それを連れてきてありがとう。戻っていいぞ」


「わかりました!」


 アホ兄が出ていった。

 うるさかったから少し嬉しい。


「さて、ちゃっちゃと用事をおわらそう。貴様を見ていて気分は悪くなるからな」


「へー。早く終わるといいね」


 私も機嫌悪くなる一方だから。


「うっうん、本題に入ろう。単刀直入に言う。貴様には学園に行ってもらう」


「えっ無理」


 学園とか何しに行けばいいの?行く意味ないでしょ。


初期限界ファースト如きが拒否権なんぞあると思っているのか」


「行く意味は?行ったところで」


「黙れ!出来損ないが!黙っていけば良いのだ!」


 うるさい……蛙の子は蛙ってやつだ。うるさいアホの親はうるさいアホだ。


「何で行かなきゃいけない?」


 私、マックスレベル1、スキルも覚えない、ココノツちゃんいく意味ない。

 今更交友関係とかどうにもできないし、興味もない。


「陛下からの命令だ、理由はそれで十分だろう!はなから貴様に拒否権などない!」


「うへぇ、今更何で」


 だるぅ。


「はぁ…仕方ない、から行く」


 渋々、嫌々、苦渋を飲んで。

 一つだけあの人のお願い聞くって約束だし。


「何だその態度は!きさま———」


「じゃね」


 私は眠い。だから寝る!

 部屋から出ると、扉の向こうから何か聞こえるけど、よくわからないから無視。



 あの後馬鹿とかアホとかに絡まれたけど、無視しながらやっと帰宅。


「私今日誕生日なんだから、突っかかってこないで欲しい」


 今日くらい惰眠を貪らせて欲しい。頼むから。いつも貪ってるけど。


「ふわぁ……おやすみ………」


 寝具大好き。

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