第12話
「……っ、はぁ……」
「アール! ……凄い汗、顔色も悪いわ……」
「あぁ大丈夫、一気に消耗しただけだ。少し休めば治る、ありがとう……ただ、その前に下の様子を見てこないと……二人にも状況を確認したいしな。一緒に来てくれるか?」
「もちろん。こんなにふらふらしてるんだもの、今アールを支えられるのは私しかいないでしょう?」
「それもそうだ」
軽く冗談を交えながら、エレンの肩を借りて立ち上がるアール。休む間もなく魔力を酷使したことで、足元がおぼつかないほど酷く消耗していた。
(さすがにこんなことはもう頻繁にできないな……特にグラッツとの直接対決は、できるだけ避けないと……)
ゆっくりと階段を降りながら、自分の歩調に合わせてくれているエレンを横目に、自身の体について考えていた。ふと、視線に気付いた彼女と目が合う。お互いの顔が近いこともあり、一瞬固まった後、エレンは顔を真っ赤にして逸らしてしまった。
「ご、ごめんね! びっくりしちゃった……!」
「いや、俺の方こそ……それより、重かっただろ。足もだいぶ良くなったから、あとは自分で歩けるよ」
「えっ、もう大丈夫なの……? そう言って無理してない?」
「あぁ、ありがとう。大丈夫だ」
(……とはいえ、無意識のうちに吸ってるな……)
しっかり床を踏み締める様子を見せながら、エレンに心配させまいと言葉を並べる。その間、彼女が気付かないうちに行っている自身の行為にも嫌気がさしていた。
「アールは回復が早いね……でも油断はしない方がいいわ。せめて完全に降りるまでは、私の肩使って?」
「心配しすぎだよ。でも、まあ……せっかくここまで言ってくれてるんだから、甘えさせてもらおうか」
「え? こっち?」
そう言って、エレンの肩に手を置くのではなく、普通に彼女と手を繋いだだけだった。アールの行動に拍子抜けすると同時に、彼の手の大きさを意識して、動揺が隠せないでいた。結局、最後の数段を降りる時、エレンがアールを支える、というより、アールがエレンをエスコートする形にすり替わってしまっていた。
「なんで!?」
「何が?」
「逆なのよ~……もー……」
「いいんだよ、エレンに負担かけたくないし」
「私が腑に落ちないのっ」
そんなやり取りをしながら大樹の外へ出て、幹を半周ほどまわると、メリヴァとアンジュが待っていた。手を繋いでいる二人を見て、安心した表情を見せる。
「二人とも、無事でよかった」
「駆けつけてくれて助かった。
「どこも影響を受けていませんよ。常に私もいますし、異常があればすぐに駆けつけられますから」
「そうか、本当に助かった。ありがとう」
「メリヴァさん、アンジュさん、ありがとうございます」
「……アール、ちょっとこっちへ」
「! あぁ……」
突然、メリヴァから呼ばれ、アールは少し離れた場所へ移動する。エレンには、アンジュが先程何が起きていたのか説明をしている。
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