5年前に僕の前からいなくなった優しいお姉さんとタイムリープしてイチャイチャする話

五十嵐邦夫

第1話

人間関係が上手くいかずに学校を辞めて引きこもりになってから丸々1年が経った。


親ももう自分を外に出す事を諦めているようで、ついにご飯を部屋の前に置く時にしか会話をしなくなった。


正直に言って、今すぐにでも死んでしまいたい。


そんな自分を未だに「この世」に留めてくれているのが、隣の部屋のお姉さん、七種結衣さんの存在だった。


結衣お姉さんは僕、平沼眞斗を「まー君」なんて呼んで可愛がってくれたが、小六の春、突然部屋からいなくなってしまった。


結衣お姉さんにもう一度会いたい。それだけが今僕が生きているただ一つの理由だ。


午前3時だ、今日はもう寝よう。


「お姉さんに…会いたいな。」




気がつくと、朝になっていた。


「マサト〜!ご飯よ〜!」


母親の声がする。


半年も家族とご飯を食べていない僕を、なんで突然朝ごはんに呼んでくるんだ?


絶対に嫌だ、部屋から出たくない。


「早く起きなさい!」


母の声が怒鳴り声に変わる。いくら呼んでも無駄と知っているはずなのに。



ガチャ



玄関の扉の開く音が聞こえた。


「すっごい怒鳴り声が聞こえたんですけど、どうかしましたか?」


妙に聞きなれた声が耳に入ってくる。


もう何年も聞いていない、妙に懐かしい声だ。

はっとして布団から飛び起きる。


「あら聞こえてたの?ごめんなさいね、結衣ちゃん。」


母親の声が途端に落ち着いた。いや、そんなのはどうでもいい。


自分の体を見てみると、すっかり小学生くらいに縮んでしまっていた。いや、部屋もそうだ。


買ってもらったゲーミングPCも、中学時代のバッグも、高校の入学式の写真も無くなって、完全に小学生の部屋になっている。


そして何より、今聞こえてきた声、結衣という名前。


確信した。自分は小学5年生に戻ってしまったのだ。


「君のお母さんから聞いたよ。どしたの?なんで起きないの?」


顔を上げると、そこには懐かしい人がいた。


第1話 [完]

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