第3話 一安心
「何を言っている」
「ですから……僕の、死に方について、です……」
「話はまだ終わっておらん。話は最後まで聞くものだ」
「え……? は、はい。申し訳ございません」
父はコホン、と軽く咳払いをした。
「つまりだ。グランシャリオ家三男としてのお前は死ぬ。ここまではいいな?」
「はい」
「その後お前はアースではなく、ガイアスとして生きるのだ」
「……! お父上!」
「里子に出す事も考えた。しかし何かのはずみで事が露見する可能性を踏まえると……それも出来なんだ」
父はそこで一度言葉を切り、大きく息を吸った。
「五年だ」
「五年……?」
「成人の区切りとなる十五歳。この時までお前を王宮に幽閉する。案ずるな、幽閉と言えば聞こえは悪いがただ外に出る事が許されないということだ」
「その五年になんの意味があるのですか?」
「本来であればその者の持つ資質が出るのは十歳。だが極まれに十五で資質が発現する場合がある」
「ということは……!」
死への恐怖と緊張で、ありったけの内臓を吐き出しそうになっていた気分が、幾分かはましになったような気がする。
「だが極まれに、だ。希望を持つにしては例が少なすぎる。あまり当てにはならないだろう」
「ですがお父上はそれに、かけてくださるのですか」
「いかにも。そこでもし、お前が地の特化型として適性が現れたのなら……地の使徒へ迎え入れてもいいだろう。過去にも数度、不幸が起きて使徒の座が空席になる事はあったそうだからな」
「お父上……!」
嬉しくて漏らしそうになるのを必死にこらえ、僕は涙を流さずにはいられなかった。
下は我慢出来ても、上から流れるものは我慢できなかった。
「喜ぶのはまだ早い。なにしろ可能性はほぼゼロに近いのだからな」
そう言って父は、憔悴しきった顔でやんわりと笑った。
希望はある、限りなくゼロに近いとしても、ゼロではないのだから。
それならば僕は……潔くこの命を捨てようと決意した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます