第62話 (オランダ)フロリアードの猫と鳥達と衝撃の寿司

 夢乃発案のフロリアード見学の旅行でオランダに来たのに、ついでにとがっつり出張仕事を入れてしまった和也は、初日早々会社間会社と飲みに行き、夕飯をすっぽかしてしまった。


 翌朝は早朝に目覚めた夢乃。和也はまだグースか気持ちよさそうに寝ている。

 朝からムカつく。

 夢乃は和也を起こさず着替えるとホテル周辺の運河沿いを散歩する為に部屋を出た。


 寒い!!!軽量のダウンコートを持ってきてよかったよ~~!!!


 朝も早いけど、みんなもう動き出していて、運河沿いをせかせかとメトロやバス停に向かう人、自転車でさーーーっ!と通り過ぎ人と結構いる。各建物の窓にはところどころ猫がいて、朝ごはんが済んだのか窓の外を眺めている。

 

 そう言えば、セージもファリーダも必ず朝は窓から外を眺めるのが日課だなあ…と、なんだか懐かしい気分になる。

 ファリーダと離れてまだ1日なのにね。

 

 部屋に戻ると和也が起きていて、綺麗に身支度済ませてどぎまぎしたように「夕べはごめん…」と謝ってくる。


 朝食を済ませ、またコートを着てバックを持つと、さっさか中央駅に行き列車に乗り、待望のフロリアードに向かった。


 和也は何度も謝ってくるけど、これもいつものパターン。

 でもさ、反省していないんだよ。きっとこの後のベルリンでも同じことが起こるのは予測済み。

 飲みに行くのはいいけど、予定変更になったら事前に連絡するのが常識じゃない。奥さんだから家族だからいいと言うのは理由にならないよね?

 そこら辺を怒ってるんだけど、ご飯食べに行けなかった事を怒ってるんだと、論点を変えるのがすごく嫌。それ、何度も話してるけど、わかってないよねー。

 

 なので列車の中でも無言で車窓を見るだけだ。猫も視野にはいりゃしない。


 会場の最寄り駅からフロリアード会場に向かう道は、世界各国の人達でひしめき合ってて、うっかりすると互いを見失いそうになるくらいに混んでいる。凄すぎ!


 ので!仕方ないので手を繋いだ。

 和也は許してくれたと思ったらしく、すっごく嬉しそうに笑ってきた。


 アホ!と、思ったけど、夢乃は嘆息してイライラを抑え込んだ。楽しみにしていたフロリアードをこんな気分でぶち壊したくないしね。


 仕方ない。喧嘩終了!

 でもガツンとは言っておかないと!


「仲直りだよ!和也!ベルリンでも同じことしたら離婚だからね!」


 オランダだから日本語わかるまいと思い込んで和也にきつめに言ったら、人混みの中で数人がびっくりした顔で振り返ったのでひやっ!とした。意外と日本語もわかる人も多いので、外国で迂闊な日本語を喋れないない!失敗失敗(苦笑)


 和也はしゅんとして、何度も「ごめん」「約束する」「もうしない」を言うけど、ホントに約束してよね~!覚えていてよね~!

 

 さて!気分を変えて!


 フロリアード会場は広大で、目的決めてさくさく歩かないと、とても1日では見終われない。案内図を見て、行く順路を決める!


 まずはチューリップいっぱいのザ!オランダ!と言う風景が広がるエリア。堪能し、その後各国の庭園を周り、日本庭園でお抹茶と和菓子で一服してたり、イベント参加したりして目一杯楽しんだ。


 そしてなんと!フロリアードの会場には自由に野生の鴨等がいて花々の間に座り込んでいたりする。もちろん猫もいる!

 最初なオブジェ?と、思うくらい銘々好きなポーズで入り込んで、昼寝していたり人口の池を泳いだり、植栽を食べていたりして、完全に風景に溶け込んでいたのだった。


 観光客はみんな大喜びで猫や鴨や野鳥と庭園コラボを撮りまくった。

 夢乃もね。

 夢乃一推しは、林の間に群生するように咲き乱れるムスカリの中に佇む黒猫ちゃんと、少し離れた人口池に浮かぶ鴨の写真だ。


 もうさ、絶対!あの猫達はプロのアクターだと思うよ!それくらいしっくりして、堂々としてたもの!


 てなことで、朝の不機嫌も遠い青空の彼方に吹き飛ばして、上機嫌でホテルに戻った。


  ホテルに戻ると、和也は昨日の謝罪にと、ホテル内の日本食レストランで夕飯しようと言い出した。

 えええ!?いいの!?ここ高級だよ?高いよ!

 和也は胸をどん!と叩いて、大丈夫と笑うので、和也のお小遣い範囲でごちになることにした。


 宿泊したホテルは日本系ホテルなので、もう絶対美味しいよね!超楽しみ!

 でもコンシェルジュに電話したら、ほぼ予約でいっぱいで、寿司カウンターした空いていないと言われたらしい。もちろん、寿司メインだけど他の料理もOKと言われたので寿司カウンターでお食事することにした。


 レストランは着飾った人達でいっぱいで、ちゃんと着替えてきてよかった!と内心安堵する夢乃と和也だった。カイロは結構ドレスコードが緩いんだけど、流石ヨーロッパに一流ホテルだから色々と気合が違う!


 寿司カウンターには、私達の他にオランダのカップルが二人と、一人でお寿司堪能しているアメリカ人だけだった。寿司カウンターの大将はにこやかに流暢な英語で「ようこそ、今日は何にしましょうか?」と聞いてくる。

 凄いいい感じの人だ!


 私達が日本人だと知ると、

「本日はお仕事でですか?ご出張?」

 と、聞いてくる。なんでもこの寿司カウンターを日本人が利用する場合はほぼ社用なんだそうだ。

 和也は「出張」という言葉に反応して「はい」と言いそうになり、慌てて「違います!夫婦旅行でフロリア―ドを見に来た」と説明していたのが笑える。


 個々のお魚はもちろん近海のお魚ので日本の魚とは味が違いますよ~と大将は笑って言う。なのでお任せにした!


 で!本当に美味しい!!!えええ~~!こんなに魚にエビの味が違うの!?驚き!


 社用で銀座の一流店にも接待で2回くらい行かせてもらったことあるけど…このお寿司が世界一美味しいんじゃないの!?と思った。大将の腕もあるんだろうけど、マジ絶品!!


 ケースに並んでいるお魚を次々と食べていると、アメリカ人の男性も興味をもったのか、「オマカセ、と言うのを私にも」と言ってきて、みんなでおかしそうに笑い、みんなで話を弾ませた。


 オランダ人カップルは彼女の誕生日お祝いできていて、アメリカ人の人は各国回る商社の人で、各国で日本食を食べるのが趣味なんだって。日本の各地でお寿司を食べた時に、味がお魚も全然違う事に気付いて、それから嵌ったんだって。凄いなあ。


 そして夢乃達の話しになり、和也は大将を含む男性陣達から「パートナーを大事にしないでどうする!」「パートナー優先だろう!?」と、えらい熱く叱られていた。

 和也は他の男性とかからの意見は聞く耳あるタイプだと思うので、結構答えているみたいで、真面目に反省しているようだ。

 ちょい溜飲下がる夢乃だった。


 てなことで、大盛り上がりの楽しい寿司カウンターの一夜だった!!大満足!!


 因みに部屋に戻り、改めレシートを見た和也は青くなってバスルームに消えて行った。レシートを見たら、その日のレートで計算すると、日本円で10万円近いお値段だよ!!

 

 ぎゃーーーー!!和也のお小遣いじゃどうにもなんない!!

 でも和也は数カ月かけてお小遣いから払う!という。日本男児に二言なし!なんだそうだ(笑)


 それにしても…恐るべし海外の日本食!!恐るべしアムステルダム!!!



追記:

フロリア―ドに行く途中の道でも、会場でもあちこちで写真を撮るスタッフがいて、広報用かな?と思ったら…海外あるある「記念写真を勝手に取ったから、後でコーナーで確認して気に入ったら買ってね!」でした・笑。

どんな感じで撮れているのか見に行ったら、私達が仲良く手を繋いで、「何こいつ?」みたいな不信感満々の顔でカメラの方を向いて歩いている写真だった・笑

面白いので、もち買いました(笑) 

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