アークブレイヴ

暁辰巳

序章 動き出した宿命

プロローグ前編

なんだろう……。人の声が聞が聞こえているのは分かるけど、なにをいっているのか、全然分からない……。

 トラックの衝突事故で全身打撲と脳挫傷のうざしょうを負った私は全身の激痛を感じるのと同時に、意識が徐々に薄れていく。



 三日間みっかかん続いた期末テスト最難関をようやく乗り越えて昼早く下校した今日。

 天気も良かったので気分転換に寄り道をし、家に向かって真っすぐ帰っていたところ、トラックの警音サイレンが突如耳に入った。



 警音サイレンが鳴った方へ振り向くと、道路に小さい子供が一人いた。

 見た目は4才か5才くらいの子供。

 


 考えるよりも先に身体からだが動いた私は、子供を何とかトラックの衝突から守れたけど、私はトラックの衝突を受けて致命傷を負った。


 無意識だった。「助けなきゃ」と咄嗟にそう思った。


 子供を助けた行動ことに後悔はなかったけど、死を前にして、自分の行動に後悔してきた。



 私はお兄ちゃんとお父さん、三人で生活している。

 バイトで学費を稼ぎながら大学に通っているお兄ちゃん。毎日会社の仕事を頑張っているお父さん。

 我が家は貧乏で、時より生活が苦しいとそう思った時もあるけど、家族お互いに生活を支え合いながら生きてきたから、

 どんなことがあっても乗り越えられたし、何があっても平気だった。


 私はお兄ちゃんとお父さんを支えるため、家の家事全般は私が全て受け持っていて、私がいないと、お兄ちゃんとお父さんは―――

 いや、それ以前に。私が死んで一番悲しむのはお兄ちゃんとお父さんだ。

 なんでこんな当たり前のことさえ、分かっていなかったんだろう。


 今更ながら私は自分の行動愚行を恥じ、心の底から悔いた。

 けど、今更悔いたり嘆いたところでもう遅い。


 誰しも人生はいつだって一度きり。現実リアルはゲームやアニメや漫画と違って、都合の良いことはそう簡単に起こらないし、絶対に起きない。


 現実とフィクションの区別はハッキリしているけど、死が目の前に一刻と迫ってきているのを前にして、物語などの神様に助けを求めている自分がいた。




 

 崩壊していく意識に、少しずつ消滅していく命。私は目を閉じた。

 

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