異世界線に流された僕の戦闘記 〜Light Fallen Angels〜

桜木 朝日

第1編 エンカウント編

第1章 初めの1歩はVサイン

第0話 思い返せば

「おはよう。今日も復興作業、頑張ろっか!」


 僕はフラット・クラリオ。ここは地球で、エリアJPの東京。オフィスの窓から街を見下ろすと、大規模な事件が起きた後のせいで、ビルは崩れてるし、道路は割れて、木が道を塞いでる。そんな東京の浅草で、僕達は“ファイター”として働いている。

 だけど、復興なんてすぐに終わっちゃう。この世界は、異世界線と異世界線を繋ぐ“ゲート”が存在してるんだ。そのゲートで取れる、異世界線同士間の引力の結晶石、“パラレルストーン”。それがすごいエネルギーを持つことを、神が死んで神々の力を人間が生まれた、“キトリス歴”で数えると僕達の世界が3016年のころ。ゲートが発見されたのは2500年。この約500年で、化石燃料も原子力もいらなくなったし、浮く車もできたし、電車や新幹線、リニアモーターカーの製造代も半分になった。

 だけど、便利な反面、そんなエネルギー源。歴史の教科書には、宇宙戦争の原因にもなっていた。


「フラット、とりあえずオフィスからチャチャっと直そうや」

「そうっすね、ここまでグチャグチャだと作業どころじゃないっす」

「ていうかさ。フラットの力があれば、これくらいは直せるんじゃない?」

「ちょっとは僕の力に頼らないで自力でやる姿勢を見せてよ」


 軽い口調の短い金髪イケメン男はクレアラント・ゴールド。みんなからはクレアって呼ばれてる。彼のことを知らない一般市民は、彼の名を聞くと女と認識することで有名。

 「~っす」が語尾の、ヒョウ獣人男はエド・リック・ティガ。こういう感じの、ネコ科獣人が支配する異世界線から流れ着いた、僕の大親友。

 で、僕の力に丸投げしようとしてきた無愛想な黒髪女はノール・タール。破壊神の力を持つんだけど、この光景には一切関係ない。

 他にも仲間はいるんだけど、出張だったり休みだったりで、今日は僕含めてこの4人だけ。


「じゃあ、壊れたのは僕が直すけど、散らかってる書類とかは自分で片付けてよね」

「へぇ~い。ちぇ、メンディ~」

「こういうときのフラットほど、役に立たないよね」

「何を言っても、このスタンスは変えないからね」

「そうっすよねぇ。やるしかないっすか」


 やっと働き始めた。まあ、いざとなれば真面目だから、これで大丈夫かな。


『緊急警報! 緊急警報! “脅威の口”が浅草駅前公園にて発生しました! 浅草防衛担当闘人ファイターは、直ちに出撃してください!』

「え…。今?」

「うん、今」


 “脅威の口”。それこそ、この光景の元凶。まあ、あれは2度と起きないと思うけど。


「とりあえず出撃するよ! 準備は-」

『報告致します。脅威の口ではなく、人工的なゲートでした。誤った情報を提供してしまい、申し訳ありません』


 人工的なゲート…? てことは、僕が行かなきゃいけないみたいだな。


「ごめん、ちょっと行ってくる。また後で」

「ん? フラット、何か落とした」

「あ、ごめん。僕の写真だ」


 この写真は、僕がこのオフィス、“デ・ロワー”に入社してすぐのもの。もうボロボロだけど、僕にはずっと輝いて見える。思い返せば、色々あったなぁ。

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