追跡者//もうひとりのサイバーサムライ
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──追跡者//もうひとりのサイバーサムライ
メティス・グループが派遣したアーサーの暗殺を目的とした不正規作戦部隊が壊滅した場所にひとりの男が立っていた。
アジア系にしてははっきりとした目鼻立ち。恐らくネイティブアメリカンの血が混じっているのではないかと思われる褐色の肌色と黒い髪の髪質。
その190センチを超える巨体はブランド物のスーツに包まれており、その上からレインコートを纏っていた。レインコートには有害な雨水が弾かれ、滴っている。
その腰には刀の鞘。男はサイバーサムライだ。
「ジョン・ドウ。現場を確認した。ベータはしくじったな」
『やったのは奴か?』
「ああ。超高周波振動刀でやられている。それから普通のサイバーサムライではありえない痕跡も見つけた。そちらにデータを送っている」
『なるほど。確かにそのようだ。奴は間違いなくそこにいる。TMCセクター13/6に』
死んでいる
相手はジョン・ドウ。この世界においてその名はただの名無しの権兵衛ではなく、
「どうする、ジョン・ドウ……。また誰かを送るか……」
『分からん。奴はいずれ野垂れ死ぬはずだが』
「あんたらは待つのは嫌いだろう」
『時は金なり、だ。今、上から指示が出た。お前が奴を殺れ、ローガン。報酬は弾んでやる。追い詰めて奴を消し、デーモンを奪還しろ』
「引き受けた」
男の名はローガン・サイトウ。サイバーサムライにして傭兵。
「早速、歓迎委員会が来たようだな」
ローガンはそういってゆっくりと周囲を見渡した。
同時に建物の陰から武装した男たちが姿を見せる。
ラフなスーツ姿に防水ジャケットというセクター13/6スタイルの服装。その下にタクティカルベストとボディアーマー。そして、入れ墨や金のアクセサリー。間違いなく犯罪組織の武装構成員だ。
「六道か? なるほど。奴は六道の庇護を得ているか」
武装した男たち20名以上を相手にローガンがただそう呟いて機械化した眼球で、武装した男たちの装備とその脅威を分析し、分類していく。
「メティスの犬だな。死んでもらうぞ」
武装した男たちがID登録が行われていない統一ロシアから流出した自動小銃や汎用機関銃、対戦車ロケット弾を構えて、その狙いを一斉にローガンに向けた。
「殺せるものならば殺してみろ」
ローガンは目を細めると腰に下げた超高周波振動刀の束を握る。
「死ね」
そして、一斉に銃弾が放たれた。口径7.62ミリライフル弾、対戦車ロケット、グレネード弾が一斉にローガンに向けて叩き込まれた。
「“R.U.R.”よ。力を貸せ」
「了承」
ローガンがそう言い、不意にローガンの背後に半透明の少女が姿を見せる。
その少女はアルマに瓜二つであった。
そして、虐殺が始まる。
「こいつ、どこから──」
「消えた! 一体──」
首が刎ね飛ばされ、銃が乱射される銃声が不意に途絶え、そして血が舞った。循環型ナノマシンが混じった血が舞った。
「血を味わえ。たっぷりとな」
超高周波振動刀がネオンの光を反射させながら六道の武装構成員たちを引き裂き、斬り殺してく。ローガンの動きはあまりにも速く、六道の武装構成員たちが放つ銃弾は掠めることすらできない。
「こいつ、動きが妙だぞ!? 何かのサイバネティクスを──」
「残念だったな。気づくのが遅い」
その動きの奇妙さに六道の武装構成員に気づくも、それを完全に解析される前にローガンは相手を全滅させた。斬り殺された死体がTMCセクター13/6に転がるが、すぐに
「死体は好きにしろ。くれてやる」
ローガンは密かに集まり、物陰から動きを見つめる
「“R.U.R.”。もういい。停止だ」
「了承」
淡々とローガンが命じるのに“R.U.R.”と呼ばれた少女が頷く。
「負担は変わらないな」
そう短く呟いてローガンは電子ドラッグの収まったウェアをワイヤレスサイバーデッキに差し込んだ。
そして、そのままローガンはTMCセクター13/6の人ごみの中に消えていった。
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