なんの変哲もない少年少女の恋の話

鉄分

第1話 なんの変哲もない入学式の話

「こうして皆さんがこの宮ノ高校に無事入学出来たこと、心より嬉しく思います。私は生徒会長の…」




長い



特に面白くもない話が本当に長々と語られている。話している方も飽きないのだろうか。



(早く終わってくんないかなぁ…)








「今日から君たちの担任になる須藤茜だ。ちなみに担当は数学。一年間、よろしく頼むよ」



担任の先生はなかなか美人な女の先生だった。

ハキハキと喋っていて、端的でとても分かりやすい。絶妙に緩そうでこれは当たりの担任だ。


「さて、今日のやることはほとんどないんだ      

が…他のクラスは自己紹介でもしてるのか…  

まぁその辺は各自やっておいてくれ。高校生なんだからできるだろ?代わりといってはなんだが今日のうちに学級委員でも決めておこう」


「誰か立候補とかしてくれるか?」



お決まりの流れが始まり、誰も立候補なんてしないだろうと思っていたのだが……



「はい」



……どうやら物好きはいるらしい。


「お、確か君は…東城さんかな?それじゃあ

とりあえず前に来て簡単な挨拶をお願いね」


いかにもな優等生。

綺麗な黒髪ロングで清楚を体現している。

そしてなにより美人。


(…やっぱ当たりのクラスだな)


「皆さんはじめまして。東城夏美です。皆さんの模範となれるように精一杯努力したいと思います。どうかよろしくお願いします」


「異議がないなら拍手~」


明らかにめんどくさいことを率先してやってくれるのだ。誰が異議申し立てようとするだろうか。


(さて問題は…………)


「よし次は男だな。こっちも誰かいるか?」



シーーーーン……



(……そりゃいないだろうな)


美人なのはいいが明らかにお堅そうで、なおかつコミュニケーションも難がありそうだ。色んな事で苦労するのなんて目に見えてる。



だけど



まぁ



そうだな




「じゃぁ、はい」


物好きはもう1人いたらしい。


「お、いいねぇスムーズで。えっと君は…中原くんだね。よし、前に来て前に来て」


前に立っていた東城さんからも驚きの目で見られてる。


(まぁそうだろうな。俺だって分からん)



でもなんとなく、本当になんとなく……


その時はこれくらいはしないと本当にダメになる気がした。ただそれだけだった。


……あとはやっぱり


「どうも……」


「…うす」


正直めっちゃタイプだ。


「えっと、こんちは。中原 士郎です。

えー、皆さんを引っ張って行けるように頑張っていきたいと思います。お願いします」


「異議なし?んじゃ拍手~」


クラスの皆から浴びる拍手はとてもむず痒くて

タイプの女の隣にいたいと思っただけの俺には受け止めきれなかったが……




なんの変哲もない人生を変えてくれる。



そんな気がしてくるような、



なんの変哲もない1日だった。

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