手違い転生者は元の世界でも家に帰れない

谷春 蓮

残念ながら手違いでした


 トラックにひかれて異世界転生した少年、葛城唯人かつらぎゆいとは今まさに魔王と対峙していた。


 「ついにここまでたどり着いた・・・」


 「魔王!決着をつけるぞ!」


 威勢よく唯人が叫ぶと魔王もそれに応じたようにしゃべりだす。


 「いいだろう・・・決着つけようぞ!」


 唯人はその言葉を受け止められなかった


 いや、受け取る暇もなかったといった方が正しいだろう


 なぜなら・・・


 「ぐヴあっ!!!?」


 魔王の言葉を聞いた瞬間、唯人の体に何かがぶつかり唯人は全身に強い衝撃を受け、弾き飛ばされ、体は宙を舞う


 体が宙を舞った瞬間に魔王の方を見たが、魔王もまた困惑の表情を浮かべていた。


 (これは魔王によるものじゃない・・・?)


 「があっ!」


 唯人の体が地面に叩きつけられる。


 「やべぇな・・・これ・・・死ぬかも・・・」


 弾き飛ばされた時と地面にたたきつけられたときに致命傷を負ったのだろう、唯人はあらゆるところから血が出ており、意識もだんだんと薄れていった。


 「何なんだ‥いまのは・・・?」


 唯人は薄れ行く意識の中で自分にぶつかって来たものが何か知るためにぶつかってきたものの方向を見る。


 「はぁっ??」


 なんとそこには、この14~15世紀の中世ヨーロッパ風な世界の見た目とはとても不釣り合いな2トントラックが鎮座していた。

 

______________________________________ 


 

 次に唯人が目を覚ますと唯人の目の前には1人の少女がおり向かい合う形で椅子に座っていた。


 (16歳ぐらいか?)

 

 「あっどうも・・・あはははは・・・」


 「いきなりなんです説明して下さい」


 「あっごめんなさい・・・」


 唯人はこの不可思議な状況に説明を求める、さっきのトラックとこの少女が何かかかわっているのは明白だった。


 「いいですか、落ち着いて聞いてください」


 目の前にいる少女はどこかで聞いたような言葉で説明をし始める


 「私はアルムイといっていわゆる神なんですがあなたが転生した世界、異世界としましょう、その異世界が「魔王が誕生してやばいぞ」ってことで私の前任者があなたの世界から魔王を倒せるぐらいの才能にあふれた人を送ることになったんですよね」


 「あ~はい?なるほど」


 いきなり神などの言葉が出て唯人は困惑する


 「で、誠に申し訳ないのですが、才能がまったくないあなたを手違いで送ってしまったらしくて・・・私への引継ぎ、時にそれが発覚しましたので、急いで呼び戻して元の世界に戻そうというわけです。」


 少女、改めアルムイから説明を受けるが唯人にはまだ腑に落ちないことがあった


 「なんでいまさら・・・俺4年も修行して、異世界でうれしいことに友達も作れてもう魔王を倒す直前までいったんですけど・・・」


 「え!??」


 どうやらアルムイには伝わってなかったらしい


 「はっ!?それ本当ですか!?」


 「はい、てかなんで伝わってないんですか」


 「あー異世界と我々神が暮らす世界では時間の流れが違いまして・・・」


 「あと基本情報は死者を通して集められるのですが引き継いだばかりでまだ情報に目通してなくて・・」


 「それは引継ぎが出来ていないのでは?」


 「あー・・・はははー・・・ちなみに今おいくつですか?」


 「17です」


 「はあっ!?13歳の時に転生させられたんですか!?それにしても・・・努力だけで魔王倒す直前まで行けたんですね努力だけで・・・どれほどの努力をすれば・・・」


 よほど唯人の言葉が信じられなかったのだろうアルムイは努力という言葉を繰り返している。


 「あとなんでトラックが異世界に来たんですか?」


 「転生というのはあなたが初めてで、転生させるために神の力とプラスで必要なカギというかきっかけというか条件を決める必要があったんですよ」


 「あれは前任者が転生に必要な条件をふざけて『トラックに轢かれる』に設定しちゃったからですねー申し訳ないです」


 「設定した条件は道路じゃなくてもいけて場所とか関係ないんですから来ちゃったんですよ、運転手はついてきませんけどね」


 「えええ・・・」


 「とにかく!あなたをもとの世界に戻しますね!」


 唯人がいまだに困惑していると、気まずいのだろう、アルムイは早く話を切り上げて唯人を元世界に戻そうとする。


 「最後の質問なんですけど・・・俺がいまいる世界って神が住む世界なんですか?」


 「っ!」


  アルムイは唯人の質問の意味が分かったのだろう、質問に答えずにいそいそと後ろに合った機械のようなものに手をかざして神パワーのようなものをためて準備を進める。


 「あの・・・?」


 「はい!準備が出来ました!もう少しで戻れると思うので私の半径5メートル以上に近づかないでじっとしててくださいね!」


 「いや・・・もしここが神の世界ならですよ・・・俺って元世界に戻るためにもっかいトラックに轢かれます?」


 「だいじょうぶです!元の世界に戻った時に4年たってるなんてことはないですから!」


 アルムイの額からは汗が浮かび質問に答えようとしない、これで唯人は確信した。


 「俺もっかいトラックに轢かれますねたぶん」


 


 


 


  



 

 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る