名もなき画家

画家になると意気込んでいたのは十年前の話。


部屋には卒業時に描いた名もなき池の鯉の絵が未だ飾られる。


ある日鯉が逃げ出した。


世界中の名画の中を旅しているとか。


モナリザ、叫び、ひまわり。


さぞ快適だろう。


一年後鯉は戻ってきた。


安心したようにのびのびと泳ぐのを見て俺はもう一度立ち上がった。

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