今は自由で多様性

@sakurawakaba

第1話

 日本はクソだ。こんな数学やら英語やらが一体何の役に立つんだ。こいつらもクソだ。揃いも揃って成績なんぞに拘ってやがる。この教育制度に何の疑問も抱かずに、大人の言う通りの価値観に従って生きている。いや、そんな奴らを生きていると言っていいのか?自分の意思を持たず、言われるがままになっている奴なんてネクロマンサーに操られる死体と同じじゃないか。お前らの下らない価値観で俺を測ろうとしてんじゃねえよ。


「君は頭が良いな」


「でも俺、学校のテストとかは毎回赤点ギリギリっすよ」


「よく言うよ。あえてギリギリを狙っているくせに」


「いやいや」


「学校のシステムは、赤点さえ取らなければ補修による時間的な損失は無い。つまり、欠点ギリギリこそが最もコスパのいい戦略というわけだ。君がそれに気付かないはずがないだろう」


「まあ、そんな感じです」


 先生は他の大人とは違う。下らない数字に惑わされることなく、自分の目で見て、自分の頭で考えて他人を評価できる人だ。


「高校生とは思えない」


「俺は至って普通の高校生ですよ。周りの連中のレベルが低すぎるだけです」


「馬鹿は嫌いかい?」


「嫌いです」


「僕もだ。この世界にはあまりにも馬鹿が多い。馬鹿がマジョリティである限り、僕らのような普通の人間が、安全かつ幸福に暮らせるような社会が訪れることは決してない」


「なら、馬鹿を減らせばいい」


「その通り。そこで、だ。僕たちと一緒にビジネスをしないかい?」


「ビジネスですか?」


「ああ、馬鹿には出来ない簡単なお仕事さ」


「具体的には何を?」


「僕たちは、世界最大規模のマルチ組織を築き上げる」

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