第22話 無関心メイド
……どうも。メイドの
気軽につみれとでも呼んでください。
私は派遣メイドをしています。
派遣メイドとはいくつもの家を金で雇われて行うという、ただそれだけのメイドです。
普通のメイドとは違うのは、仕える家が日によって違うという事でしょうか?
まぁ、仕事の内容なんて金を貰う側である私は選べないのですからどうだって良いのですけれども。
派遣メイドとして、私は一つのルールを設けています。
特にどうという事もありません。
多くの人間が行っているような、そんな些細な、誰もがしているようなルールです。
『決して踏み込まない事』。
厄介ごと、説明しづらいこと、秘密にしたいこと。
喋りづらいことはこの世にいくらでもあります。
そう言ったことに関わったらたいてい面倒くさく、問題でしかありません。
ですので私は、そう言った踏み込むと面倒な事には決して触らず、関わらないことを信条に生きてきました。
ですので、
「いやー、ごめんね。つみれさん」
と、ごひいきの
それが彼の名前です。
なんともまぁカッコいい、どこぞの主人公ですかと思うような名前ですが、どうも勇さんは凄い人物のようです。
まず、いきなり居なくなる。
来るべき場所に来なくなると言う意味での居なくなるではなく、文字通り目の前に居ようが消えます。
そして必ず大金を持って帰ってきます。
どこで稼いできたか分からないような大金で、金塊なり宝石なりを持って帰ります。
たまに金貨であるにも関わらず、使えない金貨を大量に持って帰るのかはどうかと思いますが。
耳が細長い美人さんや、なんで動くか分からない獣耳を生やした美少女などの、身元不明者を連れて帰ってくるのも多いです。
この世界の生物ではない生物の死体を持ち帰るのも多いです。
正直、勇さんには謎が多いですし、どう言う事情なのかを聞きたい所ではありますが、
「…………」
関わると面倒そうなので、私は黙ったまま職務を全うする。
「あっ、それ、アースドラゴンの血で触ると強い毒が……」
「問題ありませんので」
私はそう言ってフローリングの床を汚す大きなトカゲ(ドラゴンではないだろう。恐らく)から流れる血を気を付けて洗い流す。
こう言ったのは初期掃除が大切なのだ。ビビッて掃除しないと床が腐って、新しく床を買い替えないといけないから。
「そ、そうなんだ」
「イサム! イサム! 見て見て!」
と、扉を開けてカラースプレーで頭を緑色にしている身元不明の少年、エルフノ・フィーレさんが文字通り宙を飛びながらやって来た。
「ついに精霊の力を借りずに宙を飛べるようになったよ! これもイサムが、精霊を使わない
「ば、バカ! フィーレ! 今はつみれさんが来てるって言っただろうに!」
……なんか飛んでいるし、それに精霊とか、神式魔術なる言葉が聞こえた気がしますが、どうでも良い話です。
明らかに関わるとろくな事になりそうではないし、どうでも良い話です。
「……ではいつものように洗濯、掃除、それから料理をさせていただきます。それでよろしいのですね?」
「あ、あぁ。頼みます、つみれさん」
「……了解しました。くれぐれもこの部屋の人達を出さないように注意していてください。色々とマズいんでしょ? 説明通りならば」
「そ、そうだな。うん」
この家の人達が普通でない事は知っている。
そもそもそう言う注意事項を受けているのにも関わらず、時々この勇さんは忘れてしまうから困った物である。
そうしていつものように可も無く、不可もなく。私は派遣メイドとしての仕事を行うのであった。
「ねぇねぇ、イサム! あの女の人って前から思ってたけど何者なの?」
「そうだよなー……。ドラゴンだろうと、ピクシーだろうとメイド服と共に整理するメイド、と言った所だろうか?」
「良く分からないけど、あの人、絶対に強いよね! 大精霊の人達全員認めてるもの!」
「本人は認めないだろうけどね」
自分の知らない所で、着々と強者認定されるつみれであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます