第7話 ズボラ系メイド

 うちで働いているメイド、聖川晴海ひじりかわはるみはズボラ系女子である。


「ふんふ~ん♪ ふふふ~ん♪」


 掃除は大抵、雑巾とスリッパが一体化した雑巾スリッパにて適当に足を動かしながら掃除をするしているし、リモコンも裸足でポチポチと押したりする、一手間を惜しむメイドであった。


 見た目はまぁ、いつものような寝癖を無造作ヘアではなく、ちゃんと手入れをした見ているだけで触りたくなるほどのさらさらの髪であったならば普通に美人だと思う。

 それをちゃんとしていないからこそ、聖川晴海なのだけれども。


 ----閑話休題。

 とにかくうちのメイド、聖川晴海はズボラなのである。


「結城様。ちょっと良いですか?」


 その日の夜、部屋で1人ゆったりと休憩していた僕の所に晴海がやって来た。

 それも、タオルしか巻いていないと言う、男にとってはムラムラとしてきて当然と言ったお風呂上がりの格好である。


 最初の頃は自分もドキッとしていたが、今ではそうは思わない。

 ただ抱きしめたいなとか、腰細いなとは思うけれども、流石に最初の頃のように押し倒したいなとは思わなくなっていた。

 これも成長である。


「で、どうしたの? 晴美さん」


 と、目を逸らした状態で話しかける僕。


 ……はい、これが限界だったんです。

 ヘタレとか思わないでください。


 普通に見ていると、柔らかそうな太ももとか、かじりつきたくなりそうな豊かな乳房とかがタオル越しとは言え、ダイレクトに見えて来て本当にエロいんですもの!


「……? まぁ、良いですけど。では、結城様。この字、なんて書いてあるか、読めます?」


 と、晴美さんはそう言って僕にメモ用紙を渡して来る。

 手をきちんと拭いていないのか、ぐちゃぐちゃである。

 そこには最初の方はきちんとした文字で『・朝7時、代官山ホテルにて』と言う文字が読めるが、後の字はミミズがのた打ち回ったかのような、読む事どころか書く事すら難しそうな文字が書かれている。


「これ、何……?」

「はい。確かさっきの電話の……そうそう。明日、結城様が出席するパーティーの日時とかだったと思います」

「それを先に言え!」


 と、僕はそう言って急いで文字の解読に挑む。


 こう言った事は何度もあった。

 晴美さんは最初こそ文字を綺麗に書くのだが、それが最後まで続かずに後の方に行けば行くほど自分でも読めもしないミミズ文字を書くのだ。

 今まではおつかいの品とか、そう言ったリカバリーの聞く物が被害にあって来たのだが、明日のパーティーはまずい!


 明日のパーティーはうちの大手取引先のご令嬢が開く、大事なパーティーであり、行かないとうちの会社が倒産する事だってあり得る。

 そんな大切なパーティーの場所や必要な物を催促するように言うのは、こちらとしても忍びない!

 くそう、そんな大事な電話をよりにもよって晴美さんが取るとは!


「……! そうだ、晴美さん! 晴美さんは電話を毎回録音する癖があったよね!」

「えぇ、まぁ。大体半分くらい聞き流してしまっているので、もしもの時のために電話の内容は大抵録音していますが?」

「それだぁ----!」


 いつもは、そんな変な癖がいつ役立つかと思っていたが、今回のようなケースだと役立つ。あぁ、これであのご令嬢様のパーティーに出席……


「……あっ、すいません、結城様。さっき、友達の会話を録音して、誤ってパーティーの会話の録音消してしまってますね」


 ……晴美の言葉を聞いて、出席出来るか怪しくなる僕であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る