第8話
脅迫状が届けられた。今朝の発見までの経緯を綴る。
朝のジョギングから戻り汗で汚れたシャツを着替えながら家の裏手にある船小屋を何の気なしに見ると、その木の壁に白い風車が回っていた。そんなところに風車を付けた覚えはない。その風車の柄に何か小さく白っぽい物が付いている。窓越しだから、それが何なのか分かりにくかった。勝手口の網戸を開け庭へ出る。船小屋へ向かう。湖からの涼やかな風を受け、見慣れぬ風車がクルクル回っていた。私は近づいて風車を眺めた。木製の壁に風車の柄が突き刺さっている。その柄に細く折りたたまれた紙が結びつけられていた。私は風車の柄を壁から抜き取り、それに結ばれた紙を外し、広げて中を見た。
「トリのスマホリングは預かっている。返して欲しければ、トリのブックカバーと交換だ」
朝っぱらから脅迫である。冷や汗が背中を流れ落ちるのが分かった。せっかくシャワーを浴びて着替えたというのに、これだ。まったく、なんて朝だ! とぼやく。タバコが欲しくなったが、禁煙したことを思い出す。口寂しいが指をしゃぶるわけにもいかない。私は試しに風車の柄を横にしてくわえてみた。そのときだった。
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