白いランドセルと初恋

はじまり・・・１

あの日の事（こと）は、今でもハッキリと思（おも）い出せる。

初（はじ）めて恋（こい）をした瞬間（しゅんかん）だった。

小3の3月。

修了式（しゅうりょうしき）の日。

呼（よ）ばれた気がして校舎（こうしゃ）2階（かい）の窓（まど）から顔（かお）を覗（のぞ）かせた。

校舎（こうしゃ）と校舎（こうしゃ）の間（あいだ）、少（すこ）し薄暗（うすぐら）い場所（ばしょ）だったのに、空（そら）からそこにだけ光（ひかり）が当（あ）たったようだった。

同じクラスの同級生（どうきゅうせい）の男子が1人と他（ほか）のクラスの同級生（どうきゅうせい）の男子が4人。

そのうちの一人（ひとり）がわたしを仰（あお）ぎ見た。

みんなより頭（あたま）一（ひと）つ分（ぶん）背（せ）が高（たか）くて、目力（めぢから）の強（つよ）い人だった。

その目（め）に引（ひ）き込（こ）まれた。

一瞬（いっしゅん）、目があった。

夏（なつ）じゃないのに少（すこ）し日に焼（や）けたような肌（はだ）。

綺麗（きれい）な体（からだ）の線（せん）が制服（せいふく）の上からでも分（わ）かった。

学生（がくせい）服（ふく）がとても似合（にあ）っていた。

目（め）が逸（そ）らせないと思った次（つぎ）の瞬間（しゅんかん）に風が廊下（ろうか）を吹（ふ）き抜（ぬ）けた。

少し肌寒（はださむ）いその風が心地（ここち）よかった。

風の行方（ゆくえ）を追（お）ってしまった。彼に視線を戻すとすでに彼は向（む）こうを向（む）いていた。

わたしには永遠（えいえん）のように感（かん）じられたけど、多分（たぶん）、この間（あいだ）の時間（じかん）は数秒（すうびょう）だと思う。

初めての恋（こい）は一目惚（ひとめぼ）れだった。