第二章 恋を知る瞬間
配属前。
ゴル・ゴロスは半年ほど保護施設で言葉と挨拶などを学んだ。
だが、知能は二歳児程度であった。
背も他の邪神より低い。
「は、はじめ……まして。ごるごろすです!」
何度も施設で練習した自己紹介をした。
計二十人ほどの職員たちは手を叩いて小さな邪神を迎えた。
実は、ここは能力や技能が伴わない、口の悪い神曰く「無能者」の集まる場所であった。
実際、彼らを奴隷と見なす神や悪魔もいた。
しかし、彼らは自分の弱点などを知り、互いをフォローし合った。
何人か元の職場に戻りたい神や悪魔は珍奇な生物を見るような目でゴル・ゴロスを見ていた。
最初の仕事は草取りである。
広い庭を一日かけて雑草を取る。
男性は草刈り機を使用し、女子やゴルは鎌で花壇など細かい雑草を取る。
季節は初夏。
真夏ほどではないにせよ、長時間外にいれば汗ばむ。
慣れない手つきでゴルは草を取って行った。
元より初日の上に幼体である。
誰もゴルを戦力と見なさなかった。
それでも、懸命に草を取るゴルの姿は微笑ましい。
「暑いでしょ? これを被って」
上から声がかかった。
作業着に『沙耶』と刺繍された女性(?)が自分の被っていた麦わら帽子をゴルに被せた。
と、沙耶は隣に小さな花があることに気が付いた。
「あれ? ゴルちゃん。その花は取らないの?」
ゴル・ゴロスは、その質問に対する答えを持っていなかった。
だから、空を指さした。
「これ、同じだから」
意味が分からない。
「もしかして、『その花は空と同じように綺麗だから取りたくない』ってこと?」
今度はゴルが不思議そうな顔をした。
「きれい?」
沙耶は微笑んで告げた。
「今のゴルちゃんみたいな優しい心のことよ」
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