序章 その二 「僕は誰?」

 ある男が古い図書館で、ほぼ見捨てられたような状態で見つけた古本。


 彼と同様に、まさに機械文明が発達する十九世紀に、ある神話が世界同時的に発見された。


 後に『邪神教団』などと呼ばれるカルト集団とその宗教である。


 

 天界などは彼らの存在を以前から知っていた。


 邪神クトゥルフを始め、ダゴン、ハスターなどほぼほぼ調べつくされたが、なまじ外来種のため激しい戦闘の末に何とか封じることが出来た。


 だが、封印は完璧ではなく抜け穴からドロドロとおぞましい妖気が出ていた。


 放置してもいい予感はせず、その妖気で彼らの幼体を作った。


 いくら知識や妖術が出来ても、子供なのだ。


 彼らを使い、地球の神々が研究を始めた。


 同時期、あらかた調べつくしたと思っていたら、ハンガリーの洞くつで大きな蹄と軟体の体を持った邪神が発見される。


 ありとあらゆる書物にもどんな賢者にも、この邪神が何者なのか分からない。


 ただ、いびきのような鳴き声を永延と出している。


 寝ているようだ。


 とりあえず、溢れている妖気を集めて小さな幼体を作った。


 この子は、言葉を知らなかった。


 自分が何者であるかさえ分からなかった。


――白痴


 まさに何も知らない白い邪神であった。


 他の邪神たちも「知らない」というばかり。


 誰が言ったのか、何処の言葉か分からないが、いつの間にか、こんな名前が付いた。


『ゴル・ゴロス』


 無知の邪神。

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