2 場違いな善意(前編)(ヴィーニュ王国カンタン・クノー宰相視点)

しょうがまたかたむいております」

「すまないな。

 あさつまなおされたのだが、がねくせがあるようだ。

 もう、祖父そふころからの喪章だからな」

ちち何度なんどかつけていたし。父も祖父の喪章の癖になげいていた。

だが、父もわたしも「喪章は新調しんちょうするな」という遺言ゆいごん生前せいぜんから、何度もかされていた。

このようなものは出来るだけ、必要ひつようであってしいからだ。


 国王こくおう陛下へいか少年兵しょうねんへいに、なにもコメントはしなかった。

 追悼ついとう演説えんぜつし。

 しかし、王きゅう職員しょくいんぜん員、自主じしゅてきに喪章をくろ服装ふくそうひだりそでにつけている。



 ミルデュー新聞しんぶん誤報ごほう「ヴィーニュ少年兵全滅ぜんめつ」にかんして、訂正ていせい記事きじたのは。

 いっ週間しゅうかんのことだった。

 訂正記事には、「くわしい人数にんずうは、少年兵の安全あんぜん保障ほしょうじょう開示かいじ」となった。


 国側くにがわ呑気のんきなにをしていたか。

 何もしていない。

 遺族いぞくには、「遺たいわたしは無しで、遺ひんてんのみの返還へんかん」と、ぐん関係者かんけいしゃつたえた。

 それで、おしまいだった。



 国ないではうつせでねむ睡眠すいみん障害しょうがい問題もんだいになっている。

 夜中よなかねむれず、寝返ねがえりもてない。

 共通きょうつうして、空襲くうしゅうでかなりの裂傷れっしょうを、どの子もじゅ傷していた。


 空襲あたま両手りょうてまもり、まどにしてうずくまっていた。

 母親ははおやあかぼうちいさな子をギュッときしめていたから、仕方しかた無い。

 あにあねたちは母親に守られずにいた。


 空襲でびた硝子がらす破片はへん背中せなか残留ざんりゅうしている。

 医療いりょう施設しせつけない子は、経済けいざい的な困窮こんきゅう家庭かていだけかと思っていたが。

 とくに、おんなの子はれてかせてもらえないそうだ。

くなった少年兵は少女しょうじょで、選抜前せんばつまえに医療施設に出入でいりしたせいで、『公的こうてき記録きろく』にのこっていた」とうわさっている。


 少年兵選抜。

 無作為むさくいに、公平こうへいに、平等びょうどうえらんだはずが。

 そうだ。

 公的機関きかんに「名前なまえ」がのこっていれば、その子を指名しめいしやすい。

 地方ちほう自治じちからむから、正確せいかくなことはわからない。

 しかし、少年兵の追加ついか兵もまってないうちから、「子どもを兵にられないために、公的機関を利用りようさせない親」がえている。

 しかし、それでも、症状しょうじょう悪化あっか

 我慢がまん出来なくなった子どもが重篤じゅうとく状態じょうたいになって、背中せなかくさったにくごと切除せつじょする……最良さいりょうで最あく処置しょちけている。

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