3 鐘(後編)

 水色みずいろとびらとおって、附属校ふぞくこうもどると。

 校舎こうしゃには、半旗はんきかかげられていた。

 でも、それはヴィーニュ王国おうこく旗ではかった。

 クレメン統領とうりょう国旗でも無かった。

 水色一色いっしょくだけのはたあめともに、れさがっている。


 附属校せいはもうみんなっていた。

 六人ろくにんくなったことも。もう遺体いたいがここへもどってきていることも。


「ソモン?」

 ソモンはかるそうな木箱きばこかかえて、階段かいだんりてた。

遺品いひん整理せいりわったよ」

んだから、強制きょうせい送還そうかん?」

「ううん、遺品は一てんだけへん還。

魔術まじゅつ遺産いさんふえ】に死する』は……ヴィーニュ少年兵しょうねんへい慰霊いれい遺骨いこつおさめるって」

火葬かそうするなら、強制送還でいんじゃない?」

って」

なに?」

「ファミーユは名前なまえうばわれたままでしょ?

 その慰霊碑には、きちんと名前がきざまれるの?」

 ソモンのまわりには、一生がちらほらあつまってて、ソモンを質問しつもんめにする。


 ソモンはくびよこる。

「アタシにかれてもこまるんだけど」とこぼしながらも、おしえてくれた。


死亡しぼうと『魔術遺産【火の笛】に死する子』だけ」

「死亡日じゃなくて、せん死日の間違まちがいでしょ!」

「アタシにおこらないでよ!」

 ソモンもつい怒鳴どなってしまって、「ごめん」とあやまる。

仕方しかた無いよ。フランジュ王じょがサインしたんだもん」


「「「嗚呼ああ、フランジュ王女」」」


 かの女の名前とくらいあとに、「殿下でんか」がつづかなかった。

 わたしたちにしてみてば、国みんまもれないだけではなく、国の子どもを元敵もとてき国へった、王や王ぞくなんて、とうと存在そんざいでは、もう無い。


 かねはいつのにか、んでいた。



 そのよる

 あめなか、わたしたちは校しゃまえに、整列せいれつした。

 むっつの遺体収納しゅうのうぶくろをここで、見送みおくるためだ。

 葬送そうそうきょく陸軍りくぐん音楽隊おんがくたいも無し。

 ちょうほうも無し。

 だれも、ヴィーニュ王国歌こっかなんて、うたわなかった。

 歌うべきだったかもしれないけれど。

 死んでまで、国に自由じゆうを奪われてるみたいで、気持きもちがわるい。


 ファミーユと、そして、ファミーユとおなじくらいちいさな遺体収納袋が一だい荷車にぐるま小山こやまをつくっていた。

 魔術遺産【火の笛】に死する子どもは六人だった。

 荷車は、戦そうのために二角にかくとされたであろうウシに、牽引けんいんされてった。

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