第10話 大切なことは小田和正が教えてくれた

飢える村人30人。

飢えた狼60匹。


今、飢えた村人と飢えた狼との戦いのゴングは鳴る。


「はーい、みなさんご飯ですよー」


シエラさんがそういうとしいたけくんが大きな土鍋を地面を叩いて出した。


「しいたけ!」


しいたけくんが嬉しそうに笑っている。


「あ、丹歌に焔やっと来た!」


「……」


僕と同じ年くらいの男の子を引っ張って赤い髪の男の子が歩いてやってきた。


「丹歌、水!」


「えー」


引っ張られてきた男の子は口を尖らせる。


「あ、この子。

 丹歌!丹歌、挨拶しなさいな」


シエラがそういうとその子は挨拶をしてくれた。


「丹歌です」


「僕は、ソラです」


「ソラだな?俺は焔だ」


「丹歌くんに焔くん……だね。

 覚えた」


僕は小さく笑った。


「丹歌、早く。早く入れてよ」


シエラが口を尖らせて言う。


「何を作るの?」


丹歌くんは首を傾げる。


「ドラゴンの親子丼」


「え?」


驚く丹歌くんと焔くん。


そして万桜さんとかみさまも驚いている。


「親子丼って鶏と卵じゃないの?」


万桜さんが驚く。

やっぱり僕の思っていたモノなんだな。


「ってか親子丼って伝説の七つの大罪。

 ハラペコクリスティーヌが作った料理じゃないのか?」


「そうだ!

 でも実は違うんだな」


そう言って清空さんが現れる。


「先生、どこに行ってたんですか?」


「ドラゴンの首を持って役場に行って懸賞金を貰ってきた。

 そのお金で食材を買ってきた。

 豚肉30キロ、卵90個、鶏肉30キロ、あと水餃子1日100個」


「卵も買ったのですか?

 ドラゴンの卵があるじゃないですか」


「すまん。

 シエラ。

 あのドラゴンの卵な」


「まさか先生、壊しちゃった?」


「孵化した」


「え?」


「しかも私を親だと思っている」


「生まれたてホヤホヤ?

 肉が増えましたね!」


シエラさんがそう言うと清空さんが驚く。


「冗談です」


シエラさんがしょんぼりとしている。


「まぁ、とりあえず。

 ドラゴンは塩焼きにして丹歌の好きな親子丼作るぞ。

 丹歌、水を出して米を炊け」


「お米はどこですか?」


そう僕もそれは思っていた。

お米はどこにもない。


「しいたけ!」


しいたけくんが得意げに胸を張っている。

そして指をさす。


そこにはお米と畑ができていた。


「しいたけくんに掛かれば土さえあれば野菜もお米も作り放題なの!」


しいたけくん、君は世界を救えるぞ?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る