小説「日常」

浅沢明茶

第1話

朝、リビングのカーテンを開けて、窓を開ける。

吹き抜ける柔らかい風に君を感じた。

支え合った長い年月の中でいつも君のはにかんだ笑顔が隣にあることだけが僕の誇りだった。


先に旅立った君が好きだった紅茶の香りが部屋中に広がるように今日もやかんに火をかけて、お湯が沸けるまでの時間を君とあーだ、こーだと言いながら解いた新聞の隅にあるクロスワードパズルを一人で解く。

わからなくなると少しだけ目を閉じる。


「きっとエルガーよ。」


ふと聞こえた君の声に目を開けて、

「あっ。エルガーね。」

と、一人言を呟きながら、答えを書き込む。


やかんから、ピーッと音が鳴り出したら君の紅茶の時間。

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