エッチな幽霊がいる鬼畜ホラーエロゲの世界に転生してしまったけど、怖い思いはしたくないので全力でフラグ回避します

ひらめき

第1話:ようこそ鬼畜世界へ

 ホラーエロゲーム『呪視じゅし』。

 とある実況者のゲームプレイ動画が世間で話題になったゲームだ。


 霊視ができる主人公が、オカ研部に所属しながら部員たちと様々な事件に巻き込まれていく、ありがちなストーリー。


 そんなパッとしない物語なのだが、R18とレーティングされているだけあって、グロイしとてもエロい。それだけで一定のユーザー数を獲得している程、そっち方面の内容が濃い。

 アクションモード時も、一緒に探索しているオカ研部員のドン引きする程作りこみがされたパンツとか角度調整で見放題だし、出てくる女の子も美少女ばかり。絶対に幽霊に捕まらない安地を発見し、迫りくるエログロい幽霊の肢体を堪能する猛者まで出る始末。

 最新の3D技術を採用しているとのことで、おっぱい物理エンジンマシマシ、絶対に幽霊には必要ないであろうエッチ方面の作りこみ等、やたら気合の入ったシステムだ。

 もちろん幽霊も美形が多く、そのくせめちゃくちゃ怖いのだから話題になるのも納得できる。


 一応、俺もプレイ済みのゲームだが、クリア後の感想はだ。

 超鬼畜難易度。死にゲー。ヘルモード。

 

 幽霊の殺意が異常に高く、最終章の洋館では複数のネームドの幽霊が徘徊している。

 見つかれば追いかけられ、捕まれば即死。

 こちらを見つける精度も異様に高く、物を落としたり、ガラスの破片を踏んだだけですっ飛んでくる。


 ちなみに、出会う幽霊は捕まれば即死と言ったが、その前に必ずがある。

 主人公は快楽堕ちし、そのまま緩やかに死んでいくのだ。

 そのため、プレイヤーたちはシーン回収のため、どの幽霊にも一度は捕まろうとしてしまう。幽霊の種類も半端なく、ゲームが全く進まないと評判だ。


 日常パートでも街中を幽霊が徘徊しており、強制イベントお試し前戯やら即死イベントわからせエッチやら殺意が高い。

 基本的に寄ってくる幽霊はだいたい美少女のため、多くのユーザーは光に集まる虫が如く吸い寄せられ、そして死亡エッチしてしまう。かく言う自分もその虫の一匹である。



 幾度もエッチに、幾度もやり直し、やっとのことでラスボスが消滅したのは購入してから1か月後だった。


 すごく辛かった。


 後半はもはや意地だけで頑張っていた。

 最初は見たことのない幽霊とのエッチシーンに興奮していたが、あまりにも幽霊の殺意が高い為、終いには美少女幽霊にこちらユーザー側が殺意を覚えるレベルだ。

 しかし、これも一重に最後のご褒美ヒロインとのエッチを見るため、と言い聞かせてヤり続けた。


 そして、今まさにエンディング突入前のラストシーン。

 メインヒロインとのHシーンだ。

 ここまで夥しい数のエッチをしておいて、生身の女性とのエロシーンはこれが初だったりする。肌色が恋しい。

 お互い怖い思いをして、命からがらゴールしているため、興奮もひとしおである。

 生存本能レベルで脅かされ、お互い子孫を残そうとしているちょっと狂った描写もグッときた。

 何より生身!1か月ぶりに見るまともなエッチである!

 もう、触手やら苗床化やら寄生やらの特殊なエロシーンはお腹いっぱいなんだ!


『……もう、怖いし、寂しいし、切ないし、頭ぐちゃぐちゃになっちゃって我慢できないの!』


 その台詞を見て鼻息を荒くさせながらマウスをクリックする――。

 よし!来い!脱げ!脱ぐんだよオラ!最新3D技術の神髄見せろ!


 その瞬間、頭と股間に一気に血が巡ったためか、それとも徹夜続きだった脳が遂に限界を迎えたのか、そのまま意識が暗転した。




 




 目が覚めたのは六畳一間の畳の上だった。

 鼻の中を少しかび臭いい草の香りが通っていく。


「……え」


 ここ……どこ……?

 頭の上には古めかしい常夜灯がある。紐で引っ張って点けるタイプで、プラプラとその紐が揺れていた。壁紙も剝がれているところが多く、建材がむき出しになっている。

 ……知らない家だ。そもそも俺の家はフローリングだし、こんなにボロボロではない。


 それに――。

 

「何この格好」


 体を起こし、自分の服装を見てみる。

 なぜか学ランだ。金色のボタンが夕日に照らされて光っている。

 スラックスの先には、小さい足が顔を出していた。


 手の平を見る。

 こちらも小さい。まるで子供の手じゃないか…?


 背中に汗が滑り落ちる。

 冗談だろう、という気持ちが頭の中を過り、心臓の鼓動が早くなる。


 俺は立ち上がり、鏡を探す。

 部屋の中は狭い為、襖を開けるとすぐにトイレと脱衣所が見つかる。

 そこには顔が見えるサイズの鏡があった。


「だ、誰だお前!」


 鏡に映るのは知らない男の子だった。

 茶髪で少しあどけなさを残した、髭も生えていない可愛らしい顔をしている男の子。

 

 顔を手で触るが、伝わるのは髭剃り後のザラザラした感触ではなく、やたらすべすべでぷにぷにとした感触。

 まだ毛も生えてないガキじゃないか…。


 しばらく放心して、俺はまた居間へと戻り座る。


 ……本当に何もないな。


 テレビのひとつもない。

 部屋の隅には畳まれた布団と枕が置いてあるくらい。


 ポケットを漁ってみる。

 胸ポケットに何やら硬い感触がある。


 取り出してみると小さな手帳のようなものが出てきた。

 どうやら学校の生徒手帳のようで、真ん中に校章が描かれている。


「えっと……閉明へいめい高等学校」


 読み上げた俺は生徒手帳を落とす。


 ―――嘘だ。夢にしても冗談キツい。


 冷汗が止まらない。


 




 この高校は、ホラーエロゲーム『呪視』の舞台となっている高校の名前だった。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ご覧頂きありがとうございます。新作になります。

 こちらの方はもう一つ執筆している方と違って更新がかなり遅めとなりますのでご容赦ください…。

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