真っ白な服

 ある日の休日。私は、一人カラオケのついでにお昼を食べようとカレー専門店にやってきた。家族でよく外食するのだが、こうして一人でどこかに食べに行くのは初めてだった。

 恐る恐る店の中を覗いてみる。外から見る限り、案外空いているのが分かった。

 

 意を決して店の中に入ってみると、カレーの香ばしい匂いが鼻を掠めた。私が入ってきたのに気づいたのか、店員さんが私一人なのを確認してきた。


「それでは、カウンターの方にご案内しますね」


私は店員さんについていき、案内された席へと腰を下ろす。そして、お冷を出してくれた店員さんにお礼を言うと、さっそくメニューを開ける。

メニューの一ページ目のオススメと書かれたところを見てみると、カレーうどんが載っていた。

 

『カレー屋さんのカレーうどんは美味しい』

 

 と、何処かで耳にしたことがあるが、それは本当らしい。

周囲を見渡してみると、大半の人がカレーうどんを注文していた。


――自分もそれにしてみようかな。


そう思い注文ボタンを押すと、すぐに店員さんがやってくる。

「カレーうどんを一つお願いします」

私がそう言うと、店員さんは店の奥へと消えていった。


 しばらくして、カレーうどんが届く。さっそく食べようと思ったところで、私は重大なことに気づいてしまった。

 私の着ている服が真っ白だったのだ。しかも姉のお気に入りの服を借りている状態なので、少しでも汚してしまったら私の頭に雷が落ちてしまうだろう。

 どうしようかと迷っていても、カレーうどんが冷めてしまうので、取り敢えず一口食べてみることに。服を見てみると、まだ汚れはついていなかった。


 そのまま食べ進めること十分。完食した私は、服に汚れがついていないか確認する

 すると、胸の辺りにカレーうどんの汁がついているの発見してしまう。


――ヤバい。やってしまった!


 焦った私はどうにかして汚れをとろうと、ウェットティッシュで拭いてみる。が、とれそうにない。

だったら他の方法を探すしかないと思った私は、一つの案を頭の中から絞り出した。


――姉が前に欲しがっていた服をお詫びとして渡してみるのはどうだろう。


 幸い私は、お金だけは持っているので、店を出て服屋さんへと向かう。ちょうど、残り一着だった白のワンピースを見つけると私は会計をしにレジへと足を進めた。

 

 夕方、仕事から帰ってきた姉に謝罪をする。そして、お詫びにと買ってきた白のワンピースを姉に渡した。

それを受け取った姉は、


「ずっと欲しかったワンピースが手に入ったから許す!」


 と、お気に入りの服を汚してしまった私を許してくれたのだった。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る