「第三十三話」思いもよらぬ再会
「んぁ?」
「えっ?」
ニンベルグの屋敷周辺を探っていると、アイアスはソラとばったり遭遇した。お互いに顔を見合わせ、物陰にちゃんと隠れてから、ソラが小声で語りかけた。
「なんであなたがここにいるの、セタンタさんとの決闘はどうしたの?」
「そりゃこっちの台詞だ、お前は部屋で寝てたんじゃなかったのか?」
ソラは思わず黙ってしまった。アイアスの目は真っすぐで、きっと何もかも見透かされていると思ったからである。とてもとても、学園の牢屋からスルトを助け、脱獄を手伝ったとは言えるわけがない。
「……まぁ、お前らがいるなら好都合だな」
「はぁ? そういえば、アイアスはここに何しに来たの?」
「んん? ああ、まぁ……ちょっとな、気になったことがあったんでな」
「気になった、こと……? それって──」
ソラが言いかけたその時だった。突如、屋敷の方角から爆発のような音が聞こえてきたのは。──否、それは爆発ではない。それを思わせるほどの破壊を可能にする、あくまで人間によるものだった。
ソラは物陰から飛び出し、屋敷の方を見た。轟いた音の割にそこまで屋敷は壊れてなく、屋根が少し抉れたぐらいで済んでいる。しかし問題はそこではない、その屋根の上で、轟音に変わる金属音は鳴り響いていた。
そう、屋根の上では今、セタンタとスルトが刃を交えていたのだ。
「ああ!? な〜んであいつがここにいるんだ!? 牢屋にいるはずだろうが!」
「──ちょっと待って。アイアス、あなたまさか……」
「おうとも! セタンタのやつがニンベルグのおっさんにカチコミに来たのさ! 俺はその付き添いさ。それにしてもスルトの奴が相手か……ちとキツイな、しょうがねぇ助太刀にいくかぁ!」
「ちょっと状況がわからないんだけどぉ!?」
物陰から飛び出し、走り出すアイアス。ソラはそれを慌てて追いかけながら、心の中で舌打ちをしていた。
(いったい、どういう状況なの……!?)
互いの真意もわからないまま、屋敷の屋根の上では戦いが繰り広げられていた。奇しくもそれは、目的に共通する点が多く、途中までならば協力も可能であるはずだった者同士によって。
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