第3話 同居者憑き格安住居
正体不明のソレを床に叩きつけ、勢いのまま、正座させた鈴子。
その前に仁王立ち、自分の名を名乗ってから、ソレにも己を語るよう促したところで、急に我を取り戻した。
身の上話を聞きつつ内心では思う存分動揺する。
夢心地から一気に地の底に叩きつけられた反動で、本来感じるべき恐怖を押し退けた恨み辛みで、ソレに怯むことなく対抗できたまではヨシとしても、だ。
思ってもみない先制攻撃のせいで、鈴子並に、もしかするとそれ以上に動揺している様子のソレは、時折こちらを伺いながら話し続けている最中。
顔にもかかる黒く長い髪に、長袖のワンピースにも似た白い服。
よくある怪談に出てくる格好のようなソレは、自らを幽霊と告げた。
――まあ、「話す」や「告げた」と言っても、生身を持たないソレには明確な声はないようで、聞き手の鈴子は、もっぱら発せられる何かしらのモノを感じ取って、自分なりに解釈しているだけなのだが。
とはいえ、コミュニケーションには不自由しない様子から、鈴子の解釈はソレの「話」とそんなに離れてはいないのだろう。
(つまり……ここには一人で住めない、と)
聞き終えた最後に鈴子から出たのは、ソレ自体への感想よりも、長らく一人暮らしだった身に、思わぬ同居者が現れたことへの戸惑いだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます