死んでやる!
私のクラスには安田さんという変な女の子がいる。彼女はマンガか何かに影響されてどうやら「病んでいる女の子」を演じているようだ。
安田さんの髪はボサボサで、制服はいつも汚れている。休み時間はいつも誰もいない方向を向いてクスクス笑っているし、授業中に突然奇声を上げたり泣き出したりするのでみんな迷惑している。
そして、何か都合の悪いことがあると「死んでやる!」で叫んでポケットに入れてある錠剤の入った瓶を取り出し、飲んで自殺を図ろうとする。本当に迷惑だし、見ていて痛々しいのでやめてもらいたいといつも思っていた。
そしてある日の昼休み。安田さんはクラス委員長の山本さんと何か言い争いをしていた。その内、安田さんはいつも通り「死んでやる!」と叫んで瓶を取り出した。しかし、山本さんは怯まない。
「うん、別にいいよ。ほら死んでみてよ」
山本さんは冷静にそう言った。安田さんは固まる。
「どうしたの? 早く死んでよ。その薬飲んでさ。てかそもそもそれって本当に飲んで死ねる薬なの? 本当はラムネ菓子かなんかなんじゃない?」
「ち、ち、ちがう! こ、こ、これは本当に飲んだら死ぬ薬で……」
山本さんの指摘に安田さんは明らかに動揺していた。
「へえ、別に私は何でもいいけどさ、あんまり『死んでやる!』なんて言わない方がいいよ。死ぬ気もないくせに。みんなあなたの茶番には迷惑してるんだからさ」
私は心の中で「よくぞ言ってくれた」と山本さんを称賛した。私も安田さんの「自殺未遂」にはかなりムカついていたからだ。しかし、事態は予想外の展開を迎えた。
「……死んでやる! 本当に死んでやる!」
山本さんに反論できずに固まっていた安田さんは、急にそう叫んで瓶の中の錠剤を全部口の中に流し込んだのだ。そして、安田さんはその場で倒れてしまった。
「ふん。どうせ倒れたふりをしているだけでしょ。そんな演技したって……え?」
どうやら演技ではなく、安田さんは本当に倒れてしまったようだ。その証拠に顔色がものすごく悪くなっている。教室は大騒ぎ。すぐに救急車が呼ばれ、安田さんは病院へ搬送されていった。
私たちはしばらく教室で待機をしていたが、やがて担任の先生が教室へ戻ってきた。
「安田は無事だ。かなり危なかったがなんとか助かったらしい」
それを聞いて私たちは一応安心した。あんな奴だけど別に死んでほしいとまでは思っていないからだ。しかし、山本さんは泣きながら先生に言った。
「先生、全部私が悪いんです。私のせいで、安田さんは薬を飲んでしまって……」
しかし、先生はきょとんとしている。
「何のことだ? 安田は薬なんて飲んでないぞ。安田が倒れたのはラムネ菓子をのどに詰まらせたからだ。一度に大量に噛まずに飲み込んだもんだから、危うく窒息死するところだったんだ。それにしてもどうしてあいつはあんなに大量のラムネ菓子を飲み込んだりしたんだ? いつものことながら人騒がせな奴だよ、本当に」
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