温めていたアイディア
小説家志望の俺は、ある時小説のアイディアを思いついた。それは近未来を舞台にした物語で、書けばきっと人気が出ると確信できるほどの自信があった。
でも、せっかく思いついた良いアイディアだ。下手に書いて無駄にしては勿体無いので、念入りにプロットを作り、何度とも文章を推敲した。きっとこれは俺の代表作になる。だから妥協は許されない。
そして、小説が完成したのはアイディアを思い付いてから10年後だった。出来上がった原稿を早速出版社に持ち込んだ。
しかし、編集者は俺の小説を少しだけ読んで、原稿用紙を放り投げてしまった。
「何ですかこの小説は? 近未来が舞台なのに描写が古臭すぎますよ。登場する未来の技術はもうここ数年で既に実用化されているものばかりだし、何の目新しさもありませんよ」
俺がこの小説の制作に夢中になっている間に、世の中は想像以上に技術が発展していたらしい。こんなことなら粗があってもいいからすぐに発表するべきだった。10年間温めていたアイディアは温め過ぎてとっくに腐っていたのだ。
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