真実の口

 発明家の友人が「見せたいものがある」と言ってきたので、俺は休日に彼の研究室を訪ねた。


「よく来てくれた。早速だがこれを見てくれ。私が長年かけて開発した嘘発見機、名付けて『真実の口』だ」


 友人が見せてきたのはその名の通り、イタリアのローマにある「真実の口」によく似たものだった。


「これはどう使うんだ?」


「まずこんな風に口の中に手を入れて、何かを喋る。それが本当なら何も起こらないが、嘘なら指を噛みちぎるという仕組みさ」


 俺は驚く。


「おいおい。そんな物騒なもの作ったのかよ。第一そんなものどうやって実験したんだ?」


「いや、実は作ってみたはいいけれど、まだうまく作動するのかわからないんだ。何しろ指が噛みちぎられるわけだからな。俺も被験者になりたくないし、助手達も嫌って言うから実験ができていないんだ。そこで提案なんだが、君この真実の口に手を入れて嘘をついてみてくれないか? 友達だろ? 頼むよ」


 次の瞬間、真実の口は元友人の指を噛みちぎった。

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