次世代おせち

 食品メーカーのG社が「次世代おせち」というものを発売した。


 次世代おせちを考案した社員言う。


「今までのおせちはもう古い。『海老』『数の子』『昆布巻き』などの『子宝』や『長寿』を願った食べ物が多かったですが、それは今の時代には合わないものだ。現代の人々は未来が不安だらけで今生きていくだけで精一杯です。それに合わせて『太く短く』をコンセプトに料理を選びました。なのでかつて一世を風靡したものの一瞬で廃れた『チーズタッカルビ』『マリトッツォ』『高級食パン』『台湾カステラ』『10円パン』を入れ、お屠蘇代わりに『タピオカミルクティー』をセットにしました」


 社内ではその破天荒な発想を評価する者もいたが、あまり冒険をするべきではないという意見が大半であり、販売数をかなり絞った限定発売ということになった。


 しかし、発売を発表した途端、その斬新過ぎるコンセプトが話題となり予約注文殺到しあっという間に完売となった。


 年末になって実際におせちが届くと、買った人たちがその写真をネットにアップしてさらに話題となった。


 次世代おせちの意外なヒットを受けて、G社は翌年度に次世代おせちの生産数を10倍にすることを決定した。


 ところが翌年度、次世代おせちは全く売れず、多くの在庫を抱えてG社は倒産してしまった。


 「太く短く」をコンセプトにした、次世代おせちらしい最後であった。

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