クリスマスイブの予定

 9月のある日の、俺はクリスマスイブの計画を立てた。ネットでおすすめのスポットを探す。


「今年のクリスマスイブは何をしようか。えーっと、まずは映画を見て、次に展望台に登ってイルミネーションを見物、最後に海の見える景色のいいレストランでディナー。まあこんなところだろう」


 計画を立てた後は予約を取る。少し早いがクリスマスイブはどこもすぐ予約が一杯になるので早めに予約しておくに越したことはない。


 まずは映画館をネットで予約した。


「1番見やすい席を予約っと」


 次に展望台の予約だ。


「これもネットで予約できるのか。なになに『数年前のクリスマスは混雑していて当日入場券が買えませんでした。ぜひ予約することをお勧めします』か。ふーん、こんな人もいたのか。なおさらちゃんと予約しておかないと」


 最後にレストランの予約だ。ネットで予約はできないようなのでレストランに電話した。


「もしもし、予約をしたいのですが。はい、12月24日の夜8時に50名で、なるべく景色の良い席をお願いします。では」


 全ての予約が完了。クリスマスイブ準備はバッチリだ。


「あ、しまった。連絡しておくの忘れてた。イブの予定をメッセージアプリで送っておかないと」


 俺は慌ててメッセージアプリを開く。そして「クリスマスイブカップル撲滅委員会 第17支部」と名付けられたグループにメッセージを送付する。


「えーっと『皆さんお久しぶりです。今年もあの日が近づいてきました。今年の予定は最初に映画鑑賞、続いて展望台でイルミネーションの見学、最後に海辺のレントランでディナーです。全て予約しておきました。予約をしてないバカなカップルは、これらの人気スポットを利用できないわけです。いい気味ですね』っと。こんなもんでいいか」


 メッセージを送った途端次々と返事が返ってくる。


「今年もこの日が来ましたね! 当然参加します」


「間抜けなカップル共を肴に大いに楽しみましょう!」


「カップル撲滅委員会万歳!」


 俺は数年前からこの「クリスマスイブカップル撲滅委員会」に所属している。これはクリスマスにカップルが集まりそうなスポットを予約で埋めて、嫌がらせをすることを目的に作られたグループである。俺は今第17支部の支部長をしている。このグループは全国で100を超える支部があり、各地で委員たちがカップルにこういう嫌がらせをしているのだ。


 悪いこととは思っていない。別に直接カップル達に危害を加えるわけではないし、予約した場所へはちゃんと委員会のみんなで行く。クリスマスイブに友達とイルミネーションを見たり、景色のいいレストランで食事をすることの何がいけないと言うのか。


 色々考えているうちにメンバー全員からの返信が返ってきた。当然みんな参加するそうだ。


「よーし、今年のクリスマスイブも楽しみだ」


 俺はカレンダーを見ながらウキウキしてクリスマスイブを待つのだった。

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