鈴ちゃんを救う会

「鈴ちゃんの命を救うため、ご協力をお願いします!」


 ある日、私が商店街を歩いていると募金箱を持って、歩行者に声をかけている人達がいた。彼らは「鈴ちゃんを救う会」と名乗っている。


 どうやら「鈴ちゃん」という難病の子が海外で手術するための資金を募っているようだ。気になった私は小銭を募金箱に入れた。


 その日、夕食の時にそのことを家族に話してみると、お父さんが首を傾げて言った。


「『鈴ちゃんを救う会』か。なんか前にもそういう人達が募金活動をやってたのを見たような……」


「同じ人達だったんじゃない?」


「いや、なんかもっと昔のことなんだ。俺が子どもの頃だからもう40年くらい前か」


「なら別人かな?」


 すると、今度はお爺ちゃんが首を傾げて言った。


「そういえばワシも『鈴ちゃんを救う会』を見たことあるぞ」


「それも40年くらい前?」


「いや、ワシが子どもの頃だから70年前くらいか……さすがに別人だな」


「うーん?」


 お父さんとお爺ちゃんの話が気になった私は、ネットで「鈴ちゃんを救う会」について調べてみた。すると「鈴ちゃんを救う会」が運営しているホームページを見つけた。





 公式ホームページによれば、鈴ちゃんこと田中鈴子さんは今年で80歳。10歳の頃に難病を患って以来、70年間病と闘い続けているのだという。海外で手術できる日を夢に見ながら。

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