ロボットレンタル派遣会社
私はある会社に勤めるサラリーマン。ある日急な出張が入って2週間ほど家を空けるをことになった。
家に帰り、家族にそのことを伝えると妻と娘が文句を言った。
「今週の日曜日の遊園地に連れて行ってくれるって言ったでしょ! パパの嘘つき!」
娘はそう言って怒る。
「その次の日曜日は一緒に買い物に行ってくれるって、あなた言ってたわよね!」
妻は不機嫌そうに言う。
「わかったわかった。なんとかするよ」
困った私はロボットレンタル派遣会社に電話した。
「もしもし、私ですが……はい、姿を私に似せた男性型ロボットを一体、2週間ほど派遣してもらいたいんです。私の画像は後で送ります。身長は……」
このロボットレンタル派遣会社は用途に応じて、様々な形態のロボットを貸し出してくれる。人間型のロボットなら老若男女問わず、顔や体格も指定すれば望んだ姿のロボットを派遣してくれる。とても便利なので私も普段から利用している。
今回は私そっくりのロボットを派遣してもらい、出張中の私の代わりに家族の相手をしてもらおうと考えたのだ。
「というわけで、俺の代わりのロボットを頼んでおいたから。それでいいか?」
「別にいいよー」
「まあ、買い物に付き合ってくれるんだったら別にロボットでといいかな」
娘も妻もなんだか冷たい。ロボットを代役にするというのを考えたのは私だが「別にロボットでもいいや」という反応をされると少し寂しい。
そして出張の日の朝、家にロボットがやってきた。注文通り、私そっくりのロボットだ。
「すごいわね。本当にそっくり」
「えーいつものパパよりカッコいいよ?」
「そうかもね、あはは」
そんな会話をする妻と娘を残し、私は出張に出かけた。
そして、2週間後。
「ただいま」
出張を終えた私は帰宅し家に入るが、誰も出迎えたりはしなかった。リビングに行くと妻と娘の、そしてロボットが楽しそうに談笑していた。
「あ、帰ったの」
私に気づいた妻はそっけなく言って、またロボットと話し始めた。
「ちょっと冷たいんじゃないか。悪かったよ、ロボットに代役を任したりして……」
「え? 別に私たち怒ってないわよ。むしろいつもよりよかったぐらいだし。ねぇ?」
娘も妻に同意する。
「うん、だっていつもよりもいっぱい私と遊んでくれたし、ロボットのパパの方が私好きだよ」
「そ、そんな……」
落ち込む私にさらに妻が追い打ちをかける。
「それでね、私たち話し合ったんだけど『もう本物のパパはいらない』ってことになったのよ。これからはずっとロボットのあなたと暮らすことにしたから、もうあなたは帰って来なくていいわよ」
「そうそう、そう決めちゃったの」
とんでもないことを言い出した妻と娘。困った私はやはりロボットレンタル派遣会社に電話した。
「もしもし、いつもお世話になってます。この間はありがとうございました。……いえ、あの男性型ロボットには問題はありませんでした。今レンタル中の女性型ロボットと子ども型ロボットについてお話があるんです。はい、何かのバグか故障だと思うんですが、変なことを言い出したので、すぐに修理をしてもらいたいんですけど……」
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