狼少年

 旅行でとある田舎町に行った時、またまた牧場の近くを通った。その牧場で羊の世話をしている少年の様子をなんとなく眺めていると地元の人が話しかけてきた。


「あの男の子には近づかないほうがいいよ。この辺りじゃ狼少年なんて呼ばれているから」


 そう警告されたものの、その狼少年と呼ばれている少年が、どんな嘘をつくか興味があったので近づいてみた。


「こんにちは」


 私が少年に挨拶すると、彼は振り返って大声で言う。


「近づいちゃダメだ! ここに来たら狼に食べられてしまうよ!」


 狼少年らしいありきたりな嘘に思わず笑ってしまったが、次第に笑えなくなってきた。少年の様子がおかしい。


 少年は次第に毛むくじゃらになり、尻尾が生え指には鋭い爪が生えている。そして鋭く尖った牙が生え揃った大きな口を開いて、私に襲いかかってきたのだ。

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